55歳からのアイルランド留学日記

3ヵ月、ダブリン郊外の語学学校に通いつつ、ケルトの風に吹かれてくるよ〜

ドニゴールへ。そして、再会

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今日はドニゴールへの移動日。
学校を終えた後、タラモア、ゴールウェイ、そしてドニゴールを回ることは半年前に決めていた。
実はドニゴールはこの旅のハイライト。というのも、「ダブリンは素通りOK。ドニゴールへ行きなさい」というのが、アイルランドを愛してやまない友人のアドバイスだったから。
語学学校の先生、ジェラルディンもドニゴール出身。
「“Touristic”でないのがいい」という言葉通り、鉄道はなく、バスの便も少ない。
「何もないけれど、何もかもがある」という友人の言葉を確かめたくて、ゴールウェイからバスに乗り、4時間半揺られながら景色を見入る。

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ちょうど中間にあるスライゴー。
マーサとジルが海辺で乗馬を楽しんだと言った場所。
アイルランドを代表する詩人、W.B.Yeatsの壁画を眺め、見事な台形の形で知られるベンブルベンを通り過ぎる。
Voya という海藻風呂でも有名なスライゴー、一泊したかったけれど、どうしても日程がつくれなかった。また、いつか。

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ドニゴールに近づくにつれ、なぜかノスタルジーをかきたてられる。初めて訪れるのに、懐かしい、
子どもの頃、田舎で過ごしたのに、別の「田舎」に憧れていた。それを形にしたような風景。

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ドニゴール・タウンに着いたのが16時半。
予約したドニゴール・マナーハウスまでは2.4km。バスが到着したAbbey Hotelの前に並んでいたタクシーを拾う。
そして、グレンヴェー国立公園に行くとしたら、幾らくらいかかる? と尋ねる。ドニゴール・ツアーズという会社が日・木で1day tourが催行していて、それに参加するつもりだったのが、9月も後半に入ると日曜日だけになっていた。とにかくツーリステッィクじゃないので、公共交通機関では行けない場所。
ドライバーいわく「ハイヤーは1時間€40が基本。グレンヴェーまでは往復2時間、2時間滞在するとして€160だけど、€140にまけるよ」。
「スリーヴ・リーグ(大断崖)も一緒に行ける?」と尋ねると、ちょうど三角形だから、そこに1時間滞在するとして6時間半から7時間、€190で行ってくれると言う。
€180にまけてくれる? とお願いするとOKとのことで交渉成立。ツアー参加費がグレンヴェー国立公園とスリーヴ・リーグ、それぞれ€34だったから、一人€60は悪くないだろう。

なぜ一人€60かと言うと、語学学校のクラスメイトだったアンジェラが合流することになっていたから。
最初はゴールウェイに行きたいと言っていたのが、バイトの都合でドニゴールで合流することに。
ダブリンからドニゴールは直行バスで3.5時間。ゴールウェイからより早いのだ。

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ドニゴール城の前でアンジェラに再会。雨の中、傘もささずに白いパーカを被ったアンジェラは、相変わらず野生の鹿のよう。
ギリギリまで来るのか来ないのかわからず、やきもきしたけれど、会えてよかった。
城の隣にある“Old Castle Bar”で乾杯。最近の学校の様子を尋ねると、学校はスパニッシュ・インヴェイジョンにもイタリアン・インヴェイジョンにも負けずに落ち着きを取り戻し、アブドラに続くサウジアラビアからの生徒が新しいクラスメイトになったとか。

まだ2週間も経っていないのに、同窓会の気分。

ドニゴールの地ビールは美味しかった。

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The G Hotelでセレブな気分?

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ゴールウェイ3日目。
この旅の中で唯一の五つ星ホテルに泊まる日。というのも、このホテルを予約したのは半年前。ちょうど高校の卒業式の日で、つい気が大きくなって、一泊くらい……と予約してしまったのだった。ダブルルーム朝食付きで€180。内装に凝ったデザイナーズ・ホテルで、ゴージャスなスパもあることを考えるとリーズナブルでは、と。
とはいえ、無駄な出費は極力避けたい。ホステルから2km、上り坂をズルズルとスーツケースを引いて歩いてチェックイン。レセプションもツンとしたところがまるでなくフレンドリーなのがアイルランドという感じ。

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3つあるラウンジは、白、ピンク、紫とまるで違うスペースになっていてお洒落。
「どうぞ家のように寛いでね。何か注文しなくちゃ、と思う必要なんてないから」とレセプションの女性。写真を撮っていたら、プロのカメラマンらしき人が登場して、メダルを下げた女性の記念撮影をしていた。

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荷物を置いてゴールウェイの街をブラブラ。
The Quayというバーで昨日食べられなかったオイスターを注文。
いわゆるゴールウェイ・オイスターとは違う岩牡蠣かな。でも、美味しい。「ギネスと岩牡蠣は合うんだよ」とジョン(語学学校の先生)が言っていたことを思い出して、ギネスと一緒に。

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クラダリングの老舗に寄って、アランセーターのお店も覗く。
ストリート・ミュージシャンはギターの弾き語りが殆どで、ちょっと70年代のテイスト。ダブリンよりも軽やかな風が吹いている感じだ。

夕方からESPAというG Hotel自慢のスパの予約をしていたので早めに戻る。でも、ホテルのスパなんて行ったことがないので勝手がわからない。
レセプションで何を持っていけばいいかを聞いたら、「バスローブに着替えてどうぞ」と。スパと言っても、トリートメントは高いので、私たちが予約したのはジャグジーだけ。
「水着は着るの?」と聞くと、ご自由に、という返事。うーん。
水着の上にバスローブを羽織ってみたら、妙な格好。こんな格好でホテルをうろうろしたら温泉旅館じゃないか。バスローブは脱ぎ、水着の上に服を着て、バスローブ持参でスパへ。

スパの受付はセレブな雰囲気。既往症のチェックカードを記入して、ジャグジー&スパに案内される。暗くてゴージャスな雰囲気。誰も入ってない。ひょっとして、水着なんていらないのでは?
「水着なしで入るなんて考えられない」と言う娘。サッパリしたい私は「逆に着てたら恥ずかしいかもよ」。
迷った挙句、いったん脱いでバスローブを羽織り直し、通りがかったスタッフの女性に恐る恐る聞いてみる。
“Should I wear the swimsuits?”
この時のスタッフの女性の顔が忘れられない。
“You have to!”

はい、温泉じゃないんだからね。
もう一度水着を着てジャグジーに行くと、男性客が入っていて、一安心。
温泉とは違って、ぬるくて泳ぎたくなるジャグジーと暑くて5分も入っていられないサウナ(ミストとドライあり)を行ったり来たり。
ああ、温泉にゆっくり浸かりたい……と、セレブになれない日本人なのだった。

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アラン諸島へ。3000年前につくられた砦“ドゥン・エンガス”から眺める大西洋は穏やかに煌めいていた

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今日はアイルランドに来ることを決めてからずっと憧れていたアラン諸島へ上陸する日。
司馬遼太郎の『街道をゆく〜愛蘭土紀行』にもある けれど、かつてアラン諸島の3つの島、イニシュモア、イニシュマーン、イニシィアは、漁に出るのも、海を渡って本島に行くのも、命懸けのところだった。
海で亡くなった男たちが自分の夫や父、兄弟だと判別するためにそれぞれ違う模様を編み込んだのがアラン・セーターの始まり。一つ一つの模様には意味があって、無事を祈る気持ちも一緒に織り込まれている。
おまけに、石灰質の岩盤で出来た島には土がなく、強風で土が飛ばされないように石塀をつくって畑を囲み、岩を砕いて海藻を混ぜ、粘土を敷いて土をつくったという。
そんな島になぜか人は憧れ、一番大きなイニシュモア(面積13㎢、人口1000人足らず)には年間20万人以上の人が訪れる。

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昨日から泊まっているSnoozeles Hostelは6人部屋でスーツケースを広げる場所もないけれど、パンと飲み物、シリアルの朝食は付いていて、2段ベッドの寝心地は悪くなかった。

何と言っても列車とバスの駅に近いのがいい。そして安い(2泊2人で€76。元々予約していたソルトヒルB&Bは2泊€180だったので、ベルファストまでの往復列車2人分€78を取り戻した計算!)。
2段ベッドで一度寝てみたかった、という娘も、私と離れて(上と下だけど)快適だった、と上機嫌。
だったが、急に「大変なことを思い出した!」。
この旅で初めての忘れ物。
「ジェインの毛布」のように、赤ちゃんのときから使っていた毛布がないと眠れない、と日本からスーツケースに詰めて持ってきた毛布をアンナハーヴィに忘れてきたらしい。
「捨てられたかな。あんなにボロボロの毛布だから、捨てられたかもしれないよね……」
一応メッセージを送って返信待ち。もし、なければ、赤ちゃんを卒業する日、ということだ(いったいいくつなんだ!)。

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予め予約しておいたシャトルバス&フェリー(往復で€34)の乗り場まで、ホステルから歩く。
それにしても凄い霧。天気予報では晴れの予報だったけれど、こんな霧で何も見えなかったら『ストレンジャー・ザン・パラダイス』になってしまう。
バスの運転手さんも怖いよな、と思っていたら慣れている様子。そのうち晴れて対岸の半島が見えてきた。

 

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フェリーが出るロッサヴィール港まで1時間、フェリーに乗り換えて50分、どちらも満員の観光客を乗せて進んだ。
9時半にゴールウェイを出て、イニシュモアに着いたのが11時半くらい。途中の海は穏やかで、イルカが泳いでいるのも見えた。

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 島にはレンタサイクル会社がいくつかあるが、一番近いところで借りる。
€10+デポジット€10。現金のみ。
娘はマウンテンバイク、私は前にカゴが付いているママチャリを選ぶ。
地図を見ながら出発。アイルランドで有名な3つの断崖の中でも怖いことで有名な断崖絶壁のある砦、ドゥン・エンガスを目指す。

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自転車は自分の足で進めるから快適。目に映る石塀、牛や馬、海を見るために時々止まりながらゆっくり進む。
アザラシが見えるので有名な海岸で、SPARで買ってきたパンとジュースで昼ごはん。

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気がつくと14時過ぎていて、先を急ぐ。まだ半分しか来ていない。
途中で馬車や島内ツアーバス、そして工事の車とすれ違うが、観光以外の車両はほとんどない感じ。

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そのうちカフェやアランセーターの店に人が集まっているのが見えてきて、ドゥン・エンガスが近い模様。自転車置き場もあって、さて、どっちへ行こうかと尋ねると、ここから20分歩くのだとか。

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フェリーの港から自転車で30分、とあったので油断していたけれど、あんまり時間がなくなってきた。センターで入場料€5を払って、丘を上る。途中までは整備されているが、ゴロゴロとした岩だらけ。ドゥン・エンガスは3000年以上前につくられたと言われている砦で、軍の要塞とも儀式の聖地とも言われているが、はっきりしたことは解明されていない。

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20分てくてく歩いて砦の石壁を抜けると、一気に青い海と空、断崖絶壁が広がった。
日によっては強風が崖に近づくのも妨げるというが、今日は大丈夫。崖に腰かけて大西洋を臨む。太陽と波の煌めき、砕け散る波と風の音に「遙か」という言葉が浮かぶ

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3000年以上前にこの島のこの丘に石を運んで積み重ね、ここを中心に政治・経済・宗教・生活を営んだ人々。
この島以外に人が生きる場所があるとか、地球が丸いとか、考えもしなかったのだろう。
土もなく、植物も育ちにくい土地で、海からの恵みと太陽、自身の力と知恵に頼って生き抜いた人々。

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ドゥン・エンガスの砦から降りると15時52分。
アイスクリームでも食べて休憩したいところだが、フェリーの出航は17時。ここは先を急ごう。
一番近い道を行く。上り坂が続き、おまけに工事車両と出くわして、道路中に砂利が敷かれている。なかなか進まない自転車。汗がジワジワ噴き出してくる。
途中で白い馬と出会ったり、写真を撮りつつもとにかく先を急ぐ。

上り坂の先には下り坂が必ずある。気がつくと娘は遙か先。自転車暴走族と化していた。

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港に着いたらなんと16時40分。慌てて自転車を返してフェリーに乗り込む。
結局、地元のパブやカフェには入れなかった。この次に来るときは一泊して、ここに住んでいる人の話を聞きたいなぁ。
でも、その前に、アイルランド語を勉強しなくちゃダメなのだった。

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ぺこぺこのお腹を抱えて、ゴールウェイのWest Endへ。
パブやレストランが軒を連ねるこの界隈は、ちょっと吉祥寺みたい。
何処に入ろうかと「モナリザ」というイタリアンのメニューをじっと見ていたら、上品な女性が「ここ、美味しいわよ。とくにシーフードが」と教えてくれたので、そこに入る。
言われた通り、海老の特製ビスクソース和えリングイネはとっても美味しかった。

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西海岸の学生の街、ゴールウェイにやって来た

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朝、起きると快晴。昨日の長雨が嘘みたい。アンナハーヴィ・ファームでの最後の朝食を終えて、ゲストハウスの責任者、リンダに挨拶。

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本当に素晴らしい5日間だったと礼を言い、「暖炉のそばの絵は、ひょっとしてヘンリーとあなた?」と聞くと、「違う違う。はい、あげる」といきなり絵を持ち上げた。
「へ? これはここにある大切な絵で……」と言うと、「大丈夫、だって私が描いたんだもの」と。
思いがけないプレゼント。でも、それでなくても大荷物。一瞬ためらったけれど「ありがとう!!」と気がついたらしっかりもらっていた。
大事に持って帰らなくちゃ。

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小さなスーツケースになんとか納めて、馬を見にいく。でも、厩舎は空っぽ。外に出てみたら、昨日と同じ場所に、いたいた!
昨日からずっとここにいたのか。私のTwixは見事に泥だらけ。でも、どの馬も朝日を浴びて幸せそうだった。

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馬たち、そしてロッキー(ラブラドール。ホスピタリティ溢れるここの主)にお別れを言って、昼にはタラモアの駅へ。ここからゴールウェイへと列車で向かう。片道で大人1人€22.7。アイリッシュ・レイルは往復でもそんなに値段が変わらないのが不思議なところ。

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ほとんど駅員さんのいない駅だけど、ダブリンとゴールウェイを繋ぐ唯一の列車。乗降客はそれなりにいて、混雑して座れない人も。
1時間半、少しずつ変わっていく景色を眺めながら馬のことを考える。

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エヴリン、サム、パディ、3人のインストラクターに乗馬を教えてもらったけれど、みんなが共通して言っていたのが「エネルギーを循環させる」ということ。
馬を走らせるときはとくに“reign (手綱)”と“neckstrap”だけじゃなく、鬣をむんずと掴むことが大事。そして休ませるときは手綱を緩めてからだに触る。馬の体温を感じるのだ。
ああ、また馬の鼻先を撫でたいなぁ……と思っていたら、娘も同じことを呟いた。

もう「アンナハーヴィに帰りたい」なんて言っている。

でも、本当に「帰りたい」と思わせる場所だ。

http://www.annaharveyfarm.ie

 

ゴールウェイは西海岸にあるアイルランド第3の都市で、学生が人口の3分の1を占める街。といっ人口は7.6万人。私が住んでいるまちと変わらない小ささだ。
でも、メイン・ストリートは観光客でいっぱいで、路上ミュージシャンもいて、久しぶりにダブリンのグラフトン・ストリートを思い出した。

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光や風がカリフォルニアみたい。
海の幸のパスタを食べて、色鮮やかなまちを散歩していると川のほとりに出た。川面はキラキラ輝いて、カモメが人に近い。

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今日は30年以上ぶりのホステルに泊まる。
ゴールウェイには駅の近くにたくさんホステルがあって異常に安い。予約していたB&Bをキャンセルして急遽こっちにしたのだ。
2段ベッド、押さえていないと水が出ない蛇口、荷物を広げる場所もなく、ああ、ホステルって確かにこんな感じだった……と懐かしく30数年前にヨーロッパをバックパックで旅したことを思い出す。
明日はアラン諸島に渡る。

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人と馬のあたたかな聖地〜アンナハーヴィ4日目〜

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4日目のレッスンを終えて、暖炉の側で寛いでいる。

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5泊8時間の乗馬レッスンは、瞬く間に過ぎてしまった。
こんなに毎日幸せを実感する日々はなかった。

午前中、他の乗馬客と一緒にトラックに出た。広い農場を一周り。娘が出発する直前に買ったゴープロを首から下げて、初の騎乗動画に挑戦。
私のTwixは案の定、突然草をむしったり、水を嫌がって後退りしたけれど、一昨日よりも昨日よりも距離が縮まった気がする。
広いアウトサイドでのTrotは本当に気持ちがいい。
一緒に行った、見るからに馬に乗り慣れている女性は、途中でギャロップ&ジャンピングをしていた。いいなぁ。

 

午後は初めての夕方から。外のアリーナでキャンターを練習させてもらう予定が、あいにくの雨。それでも練習することはできたけど、インドア・アリーナで他の生徒のレッスンにお邪魔させてもらうことに。
私たちを入れて全部で10頭。最初はウォークでぐるぐる外周を回り、次はトロット。
そこまではみんなでやるけれど、キャンターは一人ずつ。
他の生徒はみんなキッズ。ウォークとトロットの時はあんまり気がつかなかったけれど、キャンターをやると一目瞭然、私たちよりずーっとレベルが上。
キャンターは3秒しか挑戦したことがないけれど、インストラクターのパディに「やる?」と聞かれ、“Yes”と答えてしまう。Noが言えない日本人。

2度目のキャンターは、アリーナを半周近く回って、恐怖の連続。メガネも帽子も落っこちそうになりながら必死でタテガミにしがみつく。
1周して戻ってくると、パディが“Well done! You're so brave!”。
そして、横目でじーっと見ていたキッズが2人、“Well done”とうなずいた。

Twix、よくやったね。

今日は全部で4時間以上(?)人を乗せたのに、文句も言わずによく頑張った。

首をトントンすると顔を寄せてきた。降りてから引っ張る時も、顔が近い。

最後に近くなれてよかった。

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レッスンが終わると夕方6時。
馬たちが次々に手綱や鞍を外されて厩舎の外へと駆り出されていく。小さなマーフィー(犬)が転がるように駆けて馬を追っていく。この小さな犬にも、ちゃんと役割があったのだ。

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その後をインストラクターのエヴリンがトレーラーで追う。馬たちは身体一つで小高い丘を上り、水場でゆっくり水を飲む。
ああ、これは「一つ釜の飯」だ。

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エヴリンに聞くと、毎日夕方はこうやって自由にさせてやるのだとか。一日よく働いた馬たちのフリータイム。その姿は神々しく、人を寄せつけないものがあった。

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最後の夕食はひき肉とチーズの重ね焼きとチップス&サラダ。

デザートはメレンゲに苺にクリーム。

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「超美味しい」と感激しながら食べる娘。
本当に、ここに来てよかった。
すべての動物たち、人が、よく働き、きちんと食べ、自由時間も持ち、幸せな空気に満たされた場所。

パチパチ爆ぜる暖炉の薪と炎の揺らめき。夢見心地で夜は更けていく。

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夢と情熱の物語〜アンナハーヴィ3日目〜

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ANNAHARVEY farmの部屋に置いてあった、The Deverell Familyの5世代に渡るヒストリー。

1928年、オークションに出されたファームを、一旦は逃したものの、落札した人が資金を調達できず、幸運にもゲット。初代のHenryが妻Bessieと4人の息子とともに新しい家に引っ越してくるところから物語は始まる。
ヘンリーは先見の明があり、資金繰りの大変さにも関わらず機械を導入、働き者で正直な男として名を馳せる。
ところがこの頃、4人の息子の一人、Weldonが髄膜炎に罹って亡くなってしまう。残された3人の息子はますます働き、Robertは5マイル先の別の農場を買い、Willyは両親とUrneyに引っ越し、SamはElsieと結婚してAnnaharveyに留まって、4人の子ども、Linda、Henry、Dermot、Sandraをもうける。
サムは自営農業が主流だった当時、16人もの人を雇って、優しくチャーミングな男としてまちでも有名になるが1968年、まだ19歳のヘンリーに農場を残して59歳で亡くなる。
ヘンリーはお祖父さんのヘンリーと同様、進取の気性に富み、それはいまもトウモロコシの実りやアンナハーヴィの発展に生き続けている。
1975年、ヘンリーはLyndaと結婚、Sam、Rachael、Rory、Aaronの4人の子どもをもうける。
1997年、一家はこれまでの農場のスタイルを変えずに乗馬センターとゲストハウスをつくることを決断、いま世界中から“Riding Holidays”を楽しみに来る人で溢れている……。

農場、乗馬センターを中心的に営んでいるのはサムとアーロン。
サムは文字通り“the girl next door”のAislingと結婚、Maeveという女の子に恵まれる。
レイチェルは乗馬宿と乗馬スクールをマネージメントしていたが、新たなビジネス、アンナハーヴィファーム・フードの経営を始め、いまはウェクスフォードで夫のRoy(彼もファーマー)と暮らしている。
ローリーはU.C.D (ユニバーシティ・カレッジ・ダブリン)農業エンジニアの資格をとり、やはり“the girl next door”のJoannaと結婚、3人の女の子、Kate、Lucy、Maddieに恵まれる。
アーロンはU.C.Dでランドスケープアーキテクチャーの資格を取り、さまざまな旅を経て、いまはCharlotteというアウトドア・ライフに興味があるパートナーと共に、新たな農場経営に意欲を燃やしている……。

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なんて壮大なドラマなんだろう。

二人のヘンリー、二人のサム、家族一人一人の想いが、少しずついまの農場のかたちを築いてきた。
ゲストハウスを取り仕切っているのはリンダ。映画の登場人物に会えた気分で彼らを見つめてしまう。

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3日目。
朝、マーサとジルは車で旅立っていった。
ひと言忠告を残して。
「今度アイルランドで車を借りるときは空港で借りないほうがいいよ」
空港で借りたトヨタ車、ハイウェイでクラッチが壊れ、自分たちの責任にされたらしい。ウィックロウでフォルクスワーゲンに借り換えたら半分の値段だったとか。
ごめんね、と一応謝って、ハグして別れた。
いつかコロラドで会おうね、と約束して。

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午前中はインドア・アリーナ(こういう風に呼ぶらしい)でCanter(駈歩)のレッスン。
マーサに「次はキャンターね」と言われ、インストラクターにやってみたいと言ったものの、できるのか、私たち?
ウォーク、トロット、そしてキャンター。
わーっ、なんだコレ?

Trotとは全然違って馬体のアップダウンがハンパない。タテガミにしっかり捕まれ、と言われたけれど、捕まっていないと本当に落っこちてしまう。
娘の馬が走る様子を見ていると、めちゃくちゃカッコよく、やっぱり走る姿は最高だなぁと味わっていたが、自分の馬が走り出すと味わう余裕なんてまるでナシ。
時間にしてみればわずか3秒くらいだと思うけど、ああ、怖かった。
ギャロップを想像すると、ああ、騎手って本当に凄いなぁ……。

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焼きたてのパンにチーズ、スープの昼食を挟んで、午後はトラック(農場を回るクロスカントリー)をWalkしながら時々Trot。
馬上から眺める景色は綺麗過ぎて、どんなに網膜に焼き付けても足りない。
Trotのアップダウンのタイミングが少し掴めてきて、お尻が痛くなくなった。快適。

私のTrixは食いしん坊でちょっとへそ曲がりで怠け者。大体群れの最後に付いていき、なかなかTrotしない。そして他の馬が止まるとすぐに止まり、隙あらば葉っぱと草を食べようとする(っていうかムシャムシャ食べている)。
今日は脚がitchy(むず痒い)のようで、顔が下がりっぱなし。寄って来るハエも気に入らない様子でしじゅうブルルンと鼻を鳴らしていた。
娘のRupertも負けず劣らず怠け者。そしてTrix以上に食いしん坊。でも白くて見た目は立派なので、乗っている姿はカッコいい。
娘はすっかりRupertに夢中で、日がな頭から離れない様子。
「次に来た時も、Rupertに乗らせてもらえるかな。私のこと、覚えててくれるかな」なんて呟いている。

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マーサとジルが帰ってしまったので、夕食は二人だけ。
山盛りのポテトの上にソーセージが乗った皿を見て「わーっ、ソーセージだ!」と歓声をあげる娘。サーヴしてくれたクラリスも苦笑い。
ちょっと淋しいので音楽をかけさせてもらったら、映画の中に入った気分。
夕陽が見えるダイニングの一角には、ゆったりしたソファ。

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「あそこで息を引き取りたい」と呟くと、「随分ロマンチックなこと考えるんだね」と娘。
夕焼けどころか、娘の目に映っているのはソーセージとポテトだけ。

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でも、私は壮大な夢を見る。

Deverell Familyの夢と情熱の物語、いつか映画化したいものだ。

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マーサとジル〜アンナハーヴィ2日目〜

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アイリッシュの人々は、天気予報は重要だ、と言う。とっても変わりやすいから、と。
でも、本当にそうかな、と思う。ここタラモアにいると、余計にそう感じる。
「晴れのち曇り、時々雨、ところによって風が強いでしょう」、これで毎日賄える気がするからだ。
必ず日に何回か雨が降る。でもそのうち止んで陽が差してくる。そうして草木が蘇る。

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 アンナハーヴィ2日目。
朝食は初めてアイリッシュ・ブレックファーストを注文。もちろんフルは無理。ここの料理は美味しいので、少し不安だったプディングも美味しく食べた。

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午前中はインサイドでTrotのレッスン。手綱を引っ張って厩舎から馬を連れ出す。馬の顔は長いけど、口は大きくない。そして歯は人間に似ている。目は大きく睫毛は驚くほど長い。
朝「昨日と同じ馬でいい?」と聞かれたので、「Basilはちょっと疲れていると思う」と伝えたら、Twixという10歳の馬に乗ることに。Basilよりは少し元気に動いてくれる。
鞍を調整しているとき、いきなり娘が泣いた。馬に足を踏まれたらしい。小学生じゃないんだから……と思ったが、写真を撮ってくれていたマーサとジルは、ずっと心配してくれた。

Trotのレッスン。マーサがずっと「ワンツーワンツー」と声を掛けてくれる。昨日よりは少しリズムが掴めてきた気がする。

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アウトサイドのフィールドでジャンピングのレッスンをするマーサとジルを見学。走ってきて軽やかにバーを超える。ダブリン・ホースショーで何度も観たけれど、ちょっと馬に乗ってみると大変さが想像できる。でも、このくらい馬と一体になれると楽しいだろうな。馬も楽しそうに見える。

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お洒落なラップサンドイッチを食べて、午後はまたアウトサイドへ。何エーカーあるのか想像ができない広い敷地を行く。出がけに強い雨が降ったけれど、すぐに止んで光が綺麗。

あ、虹まで。

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初めて外でTrotting。地面が平らじゃないのでアップダウンが余計に伝わり、気は抜けない。
水辺を行くときは娘の顔にイバラの蔓がぶつかり、すごい悲鳴。ヘルメットがないと大変なことになっていた様子。
馬って、私たちが主導権を握れないことを見透かしているんだろうな。
娘も私もインストラクターに何度も“You are the boss!”と言われる。なかなか難しいけれど、自然も馬も思い通りにはいかないから、私たちは背筋を正して向かわなくてはいけない。
そして、自然も馬も、泣きたくなるくらい美しい。

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マーサは馬に出会って40年。獣医さんの手伝いをしながらいつか自分の農場を持つことを夢見て実現させた。
ジルは内科医。ティーンエイジャーの時、変なドラッグよりずっと効く、と母親に勧められたそうだ。
マーサとジルは馬に乗るのは今日で最後。自然の中でジャンピングやギャロップを楽しむ姿は本当にカッコよかった。

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夜はお互いに撮りあった写真やビデオをシェア。

コロラドは10月15日から5月15日までは寒いけど、他は大丈夫、馬に乗りにいらっしゃい」とマーサ。

「すごく綺麗なところよ」とジル。
コロラド。今まで行こうなんて考えてこともなかった土地が、急に身近になった。

 

「明日はレンタカーを返しにいって、その足で空港へ。リアル・ワールドに帰らなくちゃ」と言うマーサに、
「そのリアル・ワールドは、夢の世界でもある。私たちにとっても、あなたにとっても」と言うと、ふっと笑って「そうね」と。
一年の半分が雪に閉ざされた土地で馬を7頭飼い、農場を経営し、犬や猫数匹と暮らす毎日は、ハードな現実そのものだろう。
でも、アイルランドのお天気のように、雨の後は一層光の美しさが沁みる暮らしなのかもしれない、と思った。

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