55歳からのアイルランド留学日記

3ヵ月、ダブリン郊外の語学学校に通いつつ、ケルトの風に吹かれてくるよ〜

「Bistro73」とマクドナルド〜若者たちの食欲と希望と

食いしん坊のローラ(日本語を勉強中のフレンチ・ガール。18歳)に誘ってもらって「Bistro73」という店へ。
「ジェラルディンやジョンが先週末お疲れ様会で行ったところだよ。凄くナイスらしいよ」と娘。
ビストロというからにはフレンチの店なのかなと思ったら、アイリッシュだとローラは言う。グルメ・サイトで調べたそうだ。
学校の前で待ち合わせ、アレクシ(シェアメイトのフレンチ・ボーイ。23歳)、ブルーノ(同じクラスのフレンチ・ボーイ。たぶん十代)、ポール(初めて会うスパニッシュ・ボーイ。年齢不詳。たぶん十代)と6人でお店へ。

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素敵なオジさんが美味しいサンドイッチとスープとビッグオニオンリングを出してくれたパブの2階。
ドアを開けると、パブとは全然違うモノトーンのスタイリッシュな内装が、ビストロ感を高めている。シャツにベストの細身のマスターがメニューを持ってきてくれて、いかにも高そう……と思いきや、€10を超えるものはほとんどないリーズナブルな料理が並んでる。
食材、調理法ともに、お洒落で美味しそう。

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私はランゴスティーニを注文。ブルーノはTで始まる白身魚の蒸したのを(名前、忘れた)。ローラはラムのゆっくり煮、ポールはミートボール・シチュウ、アレクシと娘はポークのクロケット(コロッケ。でも、日本のとは違う)を注文。

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料理の前にデミタスカップのスープと小さなもっちりしたパンが出てきて、またまたお洒落。でも、スマートなマスター以外に従業員らしき人の姿はなく、一人でやっているのかねー? と、みんなやや不安顔に。


やや時間があって、料理が登場。ブルーノの白身魚はとっても美味しそう。私は思ったのをちょっと違っていたけれど、まあ美味しかった。

他の皿からも少しいただいて食べてみたら、どれも手がかかっていて繊細で、いい感じ。

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でも、なんだかみんなの顔が今ひとつ明るくない。
そのうちローラが「みんな、お腹空いてない? フライがあったらなー」と。
若者たちには量が足りないらしい。
私にも「お腹いっぱいになった?」と聞くので、「デザートがあればね」と答え、デザート・メニューを頼んだら、メイン料理を同じくらいの値段。
シブい顔の若者たちに、別の店で食べることを提案したらみんな大賛成。
そのうちに、隣のテーブルに巨大なハンバーガーが運ばれてきて、みんな「?」。
そんなメニュー、あったっけ? 実は、下のパブと繋がってるんじゃない? と私。

 

ブルーノと私以外は飲み物も頼んでいない客に、マスターは嫌な顔一つせず、最後にはミニ・アイリッシュ・コーヒーを出してくれた。
ウィスキーたっぷりで、これもとっても美味しかった。
帰りがけ、ポールの名前を聞いたマスターが、さっと手を差し伸べて「僕もポールなんだ」と。
実はフランスからの移住者なのだとか。
若者たちにはともかく、量も味も私にはいい店だった。また来よう。

 

その後に入ったのは、マクドナルド。
ひゃー。でも、ま、いいか、と初めてアイスクリームを注文。
娘は帰ってから美味しいヨーグルト・アイスを家で食べるんだと言って何も注文せず。こういうところはとっても頑固。

みんなはオレオ入りのアイスをパクパク、アレクシに至ってはブリトーみたいなラップサンドを食べていた。

 

将来何を勉強する? 何になりたい? という会話を聞きながら、若いって素敵だなぁ、と思う。

とくに男の子たちの真っ直ぐで、その分ちょっとおバカな感じは『木更津キャッツアイ』を思い出させる。
お金がなくても、自信がなくても、自分の前に道がすーっと伸びていて、見たこともない景色がそこにある期待と少しの不安が入り混じった感じ。

食事中、初めて福島原発の事故の話をしたのだけど、コンピュータ技師志望のアレクシは、フランスの原発の制御ルームを見にいったことがあるという。
驚いたのは、40年も前のコンピュータ・システムを使っていたことなのだとか。
システムを変えるには何度もチェックする必要があって、原発を止めることになるからやらないのだ、と。
もし、自分がそういう企業で働くことになったら、新しいシステムに変えたい、と。
エネルギーの4分の3を原発に頼る国で、安全なのだと信じたい思いと不安とが一瞬交錯して見えて、胸がキュッとなった。
ポールはこの時代に文学を学んでいるそうだ。

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安全な国、安全な地域なんてどこにもないこの小さな地球の上で、私がいなくなった後も、若者たちが希望を失ったり、お腹を空かせたりすることがありませんように。

 

雨が降り出した帰り道、貸してあげた小さな傘でくっつくように歩いていくアレクシとポールの後ろ姿を見つめながら、家までの道を歩いた。

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