55歳からのアイルランド留学日記

3ヵ月、ダブリン郊外の語学学校に通いつつ、ケルトの風に吹かれてくるよ〜

350年前からある劇場で、240年前に初演された芝居を観る

f:id:lifeischallenge:20170818042904j:image

コロンビアからの留学生、アンジェラに娘が聞かれたそうだ。

「あなたのお母さんは、いつ英語を習ったの?」
「学生時代だから、30年以上も前だね」と娘が言うと、アンジェラいわく
「へぇ、よくそんなに昔のことを覚えているわね。私なんて昨日習ったことも忘れちゃうのに」。

 

ふーむ。確かに。30年以上前って、若者にとっては大昔。そして、確かにたくさん忘れてしまったけれど、覚えていることもある。その頃の記憶って、最近よりも鮮明だったりするし。
30年って、長いようであっという間。人生の折り返し地点の随分手前にいる人々からは遥か遠く、とっくに頂上は通り越して下り坂をトボトボ歩いているように見えるかもしれないけれど、こちらからはとっても近くに見える。
そこにはイメージしていた頂上なんてものはなく、ただ、前より拓けた視界が広がっているのだ。

「その年で夢なんてあるの?」と娘に聞かれ、「あるに決まってるじゃん」と答える私。

自分の目に自分の姿が映ることは朝とトイレと寝る前くらいしかないので、人生はずっと長い昇り坂にしか思えない。どんどん傾斜はきつくなるけれど、行けば行くほど、見たこともないような景色が広がっているに違いないのだ。

 f:id:lifeischallenge:20170818043037j:image

さて、午前中の授業が終わって、今日はBallsbridgeで人に会う。先日ダブリンを訪れた友人の元・同僚(といっても遥かに若い)で、なんとトリニティ・カレッジでMBAを取得したばかりの女性。
トリニティ・カレッジといえば、1592年に設立された名門大学。つまり今年で425年目。歴史と伝統ある大学で学べるなんて憧れるなぁ、と話を聞きに行ったのだ。

f:id:lifeischallenge:20170818060002j:image
アメリカ大使館の向かいにある『Ravi’s』というインド料理店は、洗練された料理と雰囲気の割に値段はリーズナブルで、とても居心地が良かった。

そして向上心と努力がちゃんとセットで備わった彼女の話は、娘だけでなく私にとっても、とても刺激的だった。

 f:id:lifeischallenge:20170818043122j:image

その後はいっぱいになったお腹を抱えてシティセンターへ。娘は前回美味しかった『Kokoro Sushi Bento』でマリエレナ(シェアメイト)の分も寿司を買って家へ。

私は一人でテンプル・バーへ。
日曜日に行った“Smock Alley Theatre”に興味が湧き、そこで1775年に初演されたコメディ・オブ・マナーズ(風俗喜劇)“The Rivals”が、ちょうどいまかかっているのを知り、観にいくことにしたのだ。
時間があったので道すがらパブでのんびりし、いざ劇場へ。

f:id:lifeischallenge:20170818043225j:image
劇のプロットは予習済み。古典だけに、はっきりと格調高いクイーンズ・イングリッシュで話してくれるはず。

 f:id:lifeischallenge:20170818042941j:image

ダブリンに来てミュージカルを含め芝居を観るのは5回目だけど、『ONCE』に続いてわかりやすかった。というか、筋がわかっているので、多少わからなくても気にならない。
設定も表現も小道具も確かに古典的ではあるけれど、男女の恋の機微やカン違い、バカさ加減は、240年前に書かれた脚本とは思えない。。
キャストの一人ひとりが正統派の芝居を生き生きと楽しそうに演じていたのにも好感が持てた。

 f:id:lifeischallenge:20170818043320j:image

それにしても、1662年に開館した煉瓦造りの劇場が、いまも変わらずあること自体、凄いこと。
劇場の入り口には、全てを知っている煉瓦が並べられ、その歴史を誇りにしていることが伝わってくる。

芝居や音楽、ダンスや乗馬は、苦しみや悲しみがたくさんあったこの国の人々の心を温め、支えてきたのだろう。

f:id:lifeischallenge:20170818043401j:image
バーの看板メニュー、パイナップル・カクテルも美味しく、満たされた気分で劇場を出る。
リフィー川に沿って歩くバス停までの道は、音楽とビールと古い石畳と人々の笑い声で溢れていた。

 f:id:lifeischallenge:20170818043651j:image