55歳からのアイルランド留学日記

3ヵ月、ダブリン郊外の語学学校に通いつつ、ケルトの風に吹かれてくるよ〜

博物館でアンジェラとデート

雨の日曜日。
珍しくアンジェラから娘に連絡があり、最後の週末、一緒にどこかへ行こうとの誘い。
私はいいから、二人で行って来なよ、と言うと、私のことも誘っているよ、と娘。
ありがたいクラスメイトの誘いに、二人してどこがいいか考える。
外を見ると木々の揺れ方がハンパなく、これでは外は無理。こんな日こそ、入場無料のナショナル・ミュージアムだ、と思いつく。

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アイルランドのナショナル・ミュージアムは4つあって、そのうちの2つ、Natural History(自然史館)とArchaeology(考古学館)へ。
日曜日は14時から17時までと開館時間が短いけれど、ちょうどいいだろう。
アンジェラはポニーテールに颯爽とブーツを履いて、いつも以上にカッコいい。自然史館の入り口にはオオヘラジカの骨格が展示され、アイルランドの鳥たちの剥製もたくさん。
ずっと気になっていたモノトーンの尾が長い鳥の名前が“MAGPIE”だとわかった。アンジェラも同じ鳥の名前を知りたがっていたようだ。

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昆虫の標本までしげしげと眺め、英語の説明を読むアンジェラ。
博物館は最初にゆっくりすると絶対全部回れなくなるのでスピードアップして次のフロアへ。獣たちの剥製の中ではアンテロープが凄い迫力。最後にあったゴリラ、チンパンジー、人間の骨の標本を見て、日本で見る骨格とあまりに違ってびっくり。
頭は小さく、背骨は太く真っ直ぐからだの中心を通り、肩は真横に開いていて、脚はハッキリと長い。
「これはどう見ても日本人じゃない」とアンジェラに説明しながら、ここに日本人の骨がわざわざ展示されているわけないじゃん、と自分でツッコミを入れる。

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考古学館は、まさに昨日見て来たタラのブローチなどが展示されていて、ぴったりのタイミング。精巧な彫りが施された金やブロンズの装飾品は、いまも変わらず目を奪うものがある。

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最後に入ったKingship &Sacrificeの展示は衝撃的で、Bog body(泥炭地で発見されたミイラ)の説明を読んでいると、人間という生きものの限りない闇の底に沈んでいくようで、胸が痛くなった。

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17時、閉館と同時に追い出され、スティーヴンズ・グリーンに面したバーで一服。
ピザとビール1パイント€10に目を奪われて入ったのだけど、日曜日の夕方、すでにキッチンは閉まっていて、最後のナチョスを出してくれた。
ベジタリアンのアンジェラだけど、いまは乳製品はOKなので、一緒につまめてよかった。

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アンジェラとはずっと話をしたいと思っていたので、コロンビアという国のこと、環境エンジニアという仕事のこと、ベジタリアンになった理由、家族のことなど、いろいろ尋ねた。

コロンビアはとても危険な国だと思われているけれど、それは情報の中のこと。暮らしている側はそんなに危険は感じていないし、内戦状態が続いていたこれまでとは違う。
でも、環境問題への意識は薄く、酷い森林伐採が続いている。
大学で学んでいるときは、同級生はみんな世界を変えるんだ、と夢を描いていたけれど、卒業すると社会の論理に巻き込まれてしまった。
アンジェラは海外で修士号を取りたくて英語の勉強をしに来ていて、アイルランドは風景も人間ももともと好きだった(アメリカも英国も好きじゃない)。
環境のことを考えてベジタリアンになって、いまはアニマル・ライツのことも考えている。
そのうち乳製品もやめるつもりで、ラブリーなお祖母さんとお母さん、お姉さんと一緒に暮らしている……。

地球の未来を考えて、子どもはいらない、とキッパリ。
いまはアルバイトを3つも掛け持ちしていて、金曜日には午前中キライニービーチで泳いで、学校へ行って、クリーニングのバイトをして、その後インド料理店のウェイトレスに行ったらしい。

 

まだ学校へ行き始めて間もない頃、キライニーパークをジョギング中のアンジェラにバッタリ会ったことがある。その時芝生に寝転んでストレッチをしていた、その毅然とストイックな姿が鮮烈に刻まれているが、生き方もそのまま。
18歳で両親の元を離れた私に“You are brave!”と言ったけれど、Braveという言葉が似合うのは彼女のほうだ。

そして、NaturalでPureで限りなくHonest。
コロンビア以外の国で暮らすなんて考えられない!という言葉に、自分はこんな風に祖国を思ったことがあるだろうかと考えずにはいられなかった。

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一緒にバスに乗って帰った後、ベジの焼うどんをつくって食べながら(たまたまお肉がなかっただけのこと)、絶対ベジタリアンにはなれない、と宣言する娘。
なんだか、スケール感が違うなぁ。
ちょうどその時、アレクシから「Back to France」とメッセージ。
見たら、中庭らしきところにプールがあって、遠景には美しい山脈。
「これ、家?」と返信したら「Yes」と。
ああ、スケール感違い過ぎ。

娘と二人、我が家を思ってなんとも言えない気分に浸るのだった。

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