55歳からのアイルランド留学日記

3ヵ月、ダブリン郊外の語学学校に通いつつ、ケルトの風に吹かれてくるよ〜

女子会で“CHA-CHA-CHA!”

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さて、別れの時期が迫ってきて、アンジェラやアナンダ(二人ともコロンビアからの留学生でクラスメイト)と過ごせるのもあと数日。

二人にジャパニーズ・フードを食べさせたいなぁ。とくに天ぷらとお好みソース味の焼うどん。
極小キッチンだけれど家に来てもらうか……と二人に予定を聞いたら、今日がいいということで朝から準備。
米を丁寧に研いで水に浸して、冷凍しておいた海老も冷蔵庫に移して、かき揚げ用の野菜も切って。
アンジェラはベジタリアンだから、メニューは野菜中心に。
・精進揚げ、時々海老天ぷら
・焼うどん(味付けはお好みソースと醤油)
・手巻き寿司(アボカド、きゅうり、卵焼き、梅、レタス)
・グラタン・ドフィノワ(フレンチ・ボーイズが残していったポテトが大量にあるから!)

 

学校では、クラスメイトのアドリアーノ(ブラジルからの長期滞在の留学生。本気で移住を考えていて、毎日働いている)が上機嫌。今日はオフで、“MUSASHI”というジャパニーズ・レストランに行くそうだ。サーモンにクリームチーズ、アボカドと海老、大好きなんだと嬉しそうに話してくれる。

経営はブラジルの人がやっていて、日本とブラジル、どちらのフードも食べられるのだとか。

いつも仕事で疲れているアドリアーノが元気だと、こちらまで嬉しくなる。

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17時に授業が終わって、急いで買い物。

まず、いつもの店で生クリームとミルクを買う。最後だろうから、写真も撮らせてもらって。

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そして、Punnet(オーガニックの八百屋さん)へ。

アスパラを発見。ラッキー。ジャンボマッシュルームも美味しそう。

娘は目をギラギラさせて果物を物色。

りんご(Pink Lady)とプラム、ドーナツ型の桃にシャインマスカット、ブルーベリー……。
あと数日、そんなに食べられないよ、といくつか諦めさせようとするが、「絶対食べる」と譲らない娘。

大きな買い物袋を下げて「果物をたくさん買うって幸せだよね」と。

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このキッチンでみんなにごはんをつくるのも最後だろう。

それにしても、電熱ヒーター(電気コンロ?)と小さなまな板しかないキッチンは使いにくい。狭くて動線も悪いので、ついつい娘にあたる。
「ちゃかちゃか働いてね。あなたが言い出しっぺなんだからね」
「え? 違うよ、今日は。だから手伝うつもりでいたんだけど」
「違うでしょ。もともとあなたがアンジェラにかき揚げや焼うどんを食べさせたいって言うから……」と狭いキッチンが余計に狭くなるやり取り。
ああ、クリスマスの朝を思い出す。友人を誘っておいて、当日はピリピリ。動きの鈍い娘に苛立ちが高じるいつものパターン。

と言っている間に19時。玄関にノックの音がして、アンジェラとアナンダがアイスクリームを片手にやってきた。


天ぷらは揚げている最中だったけど、グラタンはオーブンの中、酢飯と焼うどんは出来ている。
「いい匂い」とアンジェラ。
シェアメイトのアイヴァンは出かけるというので、階下には移動せず、4人でキッチン・テーブルを囲むことに。
初めての女子会だ!

 

女子はよく食べ、よく喋り、よく笑う。
アンジェラはアスパラとマッシュルームの天ぷらが気に入ったようで、ずーっと食べ続け、アナンダも海老天や手巻き寿司をパクパク。娘に至っては推して知るべし。
テーブルに載り切らないから、ゲームのようにお皿を移動させつつ、ひたすら食べ、たわいもない会話をし、バカ笑い。ボーイズのノリとは全然違う華やかさ。
二人とも音楽好きで、音楽が止まるとすぐに「次!」とリクエスト。
そのうち、日本vsコロンビアの音楽対決になり、お互いのオススメ曲をかける。コロンビアの音楽はもちろんラテン・ミュージック、リズムがとにかく心地好い。
サルサやチャチャとラップがミックスしたような曲をかけてくれて、二人のガールズは一緒に歌い、上半身でダンス(もっと広ければ踊れたのだろう)。
美しいコロンビアの大自然とヴィヴィッドなファッションに身を包んだ歌姫のPVは、ヨーロッパとはまるで違ってファンタスティック。

 

はっと思い出して、あの曲を探す。
あった、石井明美の「CHA-CHA-CHA」。1986年の大ヒット曲で、明石家さんま大竹しのぶが結婚するきっかけになった「男女7人夏物語」の主題歌。
TV局のスタジオで歌う彼女とバック・ダンサーはいかにも時代を感じさせるが、曲は全然古びていない。
二人とも“Oh!Japanese CHA-CHA!” と映像に釘付け。
時々カメラに映されるオジさんの手拍子にアンジェラは大笑い。全然知らない娘は石井明美の肩パッドが目立つ衣装に「古いね」とクールなコメント。
ああ、この頃、私は必死で働いていたな。肩パッドが強烈なゴルチェのジャケットは特攻服みたいなものだった……。
当時を懐かしんでいるヒマはない。天ぷらがなくなった。追加で揚げなくちゃ。

 

そのうち、アナンダと私、アンジェラと娘のチームに分かれてカラオケ対決に。
ボブ・ディランの“A Hard Rain’s A-Gonna Fall”、アデルの“Hello”にアヴリル・ラヴィーン……。
そういえば、子どもの頃、家に唯一あったレコードは父が好きな「ラ・クンパルシータ」だった。「知ってる?」と尋ねると、「もちろん!」とアンジェラ。
🎶CHA CHA CHA CHA 〜と歌い出す。
何ソレ、知らない、とアナンダ。
大笑いしながら夜は更けていく。ああ、このまま時間が過ぎなければいいのに。

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21時を回った頃、アナンダの叔母さんから(アナンダは17年前に移住した叔母さんの家に滞在している)迎えにきたという電話。
歩いて帰るから大丈夫、と断ったものの、少し経ってから「行かなくちゃ」と立ち上がるアナンダに、「さあ、片付けるよ」とアンジェラ。
上着を脱ぎ、髪を束ねて、いきなり仕事モード。「あなたはこれをオーガナイズして」とアナンダに指示を出し、自分は洗い物をキビキビこなす。
アイスや果物も食べ、抹茶も立てて、乙女たちが帰っていったのは23時を回ってから。
玄関を出て挨拶をして、二人は反対方向へと歩き出した。
え? 一緒に帰るんじゃなかったの?
箱入り娘のアナンダを心配しつつ見送りながら、颯爽と歩いていくアンジェラの後ろ姿を眺める。今夜も月が綺麗だ。