55歳からのアイルランド留学日記

3ヵ月、ダブリン郊外の語学学校に通いつつ、ケルトの風に吹かれてくるよ〜

夢と情熱の物語〜アンナハーヴィ3日目〜

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ANNAHARVEY farmの部屋に置いてあった、The Deverell Familyの5世代に渡るヒストリー。

1928年、オークションに出されたファームを、一旦は逃したものの、落札した人が資金を調達できず、幸運にもゲット。初代のHenryが妻Bessieと4人の息子とともに新しい家に引っ越してくるところから物語は始まる。
ヘンリーは先見の明があり、資金繰りの大変さにも関わらず機械を導入、働き者で正直な男として名を馳せる。
ところがこの頃、4人の息子の一人、Weldonが髄膜炎に罹って亡くなってしまう。残された3人の息子はますます働き、Robertは5マイル先の別の農場を買い、Willyは両親とUrneyに引っ越し、SamはElsieと結婚してAnnaharveyに留まって、4人の子ども、Linda、Henry、Dermot、Sandraをもうける。
サムは自営農業が主流だった当時、16人もの人を雇って、優しくチャーミングな男としてまちでも有名になるが1968年、まだ19歳のヘンリーに農場を残して59歳で亡くなる。
ヘンリーはお祖父さんのヘンリーと同様、進取の気性に富み、それはいまもトウモロコシの実りやアンナハーヴィの発展に生き続けている。
1975年、ヘンリーはLyndaと結婚、Sam、Rachael、Rory、Aaronの4人の子どもをもうける。
1997年、一家はこれまでの農場のスタイルを変えずに乗馬センターとゲストハウスをつくることを決断、いま世界中から“Riding Holidays”を楽しみに来る人で溢れている……。

農場、乗馬センターを中心的に営んでいるのはサムとアーロン。
サムは文字通り“the girl next door”のAislingと結婚、Maeveという女の子に恵まれる。
レイチェルは乗馬宿と乗馬スクールをマネージメントしていたが、新たなビジネス、アンナハーヴィファーム・フードの経営を始め、いまはウェクスフォードで夫のRoy(彼もファーマー)と暮らしている。
ローリーはU.C.D (ユニバーシティ・カレッジ・ダブリン)農業エンジニアの資格をとり、やはり“the girl next door”のJoannaと結婚、3人の女の子、Kate、Lucy、Maddieに恵まれる。
アーロンはU.C.Dでランドスケープアーキテクチャーの資格を取り、さまざまな旅を経て、いまはCharlotteというアウトドア・ライフに興味があるパートナーと共に、新たな農場経営に意欲を燃やしている……。

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なんて壮大なドラマなんだろう。

二人のヘンリー、二人のサム、家族一人一人の想いが、少しずついまの農場のかたちを築いてきた。
ゲストハウスを取り仕切っているのはリンダ。映画の登場人物に会えた気分で彼らを見つめてしまう。

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3日目。
朝、マーサとジルは車で旅立っていった。
ひと言忠告を残して。
「今度アイルランドで車を借りるときは空港で借りないほうがいいよ」
空港で借りたトヨタ車、ハイウェイでクラッチが壊れ、自分たちの責任にされたらしい。ウィックロウでフォルクスワーゲンに借り換えたら半分の値段だったとか。
ごめんね、と一応謝って、ハグして別れた。
いつかコロラドで会おうね、と約束して。

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午前中はインドア・アリーナ(こういう風に呼ぶらしい)でCanter(駈歩)のレッスン。
マーサに「次はキャンターね」と言われ、インストラクターにやってみたいと言ったものの、できるのか、私たち?
ウォーク、トロット、そしてキャンター。
わーっ、なんだコレ?

Trotとは全然違って馬体のアップダウンがハンパない。タテガミにしっかり捕まれ、と言われたけれど、捕まっていないと本当に落っこちてしまう。
娘の馬が走る様子を見ていると、めちゃくちゃカッコよく、やっぱり走る姿は最高だなぁと味わっていたが、自分の馬が走り出すと味わう余裕なんてまるでナシ。
時間にしてみればわずか3秒くらいだと思うけど、ああ、怖かった。
ギャロップを想像すると、ああ、騎手って本当に凄いなぁ……。

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焼きたてのパンにチーズ、スープの昼食を挟んで、午後はトラック(農場を回るクロスカントリー)をWalkしながら時々Trot。
馬上から眺める景色は綺麗過ぎて、どんなに網膜に焼き付けても足りない。
Trotのアップダウンのタイミングが少し掴めてきて、お尻が痛くなくなった。快適。

私のTrixは食いしん坊でちょっとへそ曲がりで怠け者。大体群れの最後に付いていき、なかなかTrotしない。そして他の馬が止まるとすぐに止まり、隙あらば葉っぱと草を食べようとする(っていうかムシャムシャ食べている)。
今日は脚がitchy(むず痒い)のようで、顔が下がりっぱなし。寄って来るハエも気に入らない様子でしじゅうブルルンと鼻を鳴らしていた。
娘のRupertも負けず劣らず怠け者。そしてTrix以上に食いしん坊。でも白くて見た目は立派なので、乗っている姿はカッコいい。
娘はすっかりRupertに夢中で、日がな頭から離れない様子。
「次に来た時も、Rupertに乗らせてもらえるかな。私のこと、覚えててくれるかな」なんて呟いている。

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マーサとジルが帰ってしまったので、夕食は二人だけ。
山盛りのポテトの上にソーセージが乗った皿を見て「わーっ、ソーセージだ!」と歓声をあげる娘。サーヴしてくれたクラリスも苦笑い。
ちょっと淋しいので音楽をかけさせてもらったら、映画の中に入った気分。
夕陽が見えるダイニングの一角には、ゆったりしたソファ。

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「あそこで息を引き取りたい」と呟くと、「随分ロマンチックなこと考えるんだね」と娘。
夕焼けどころか、娘の目に映っているのはソーセージとポテトだけ。

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でも、私は壮大な夢を見る。

Deverell Familyの夢と情熱の物語、いつか映画化したいものだ。

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