55歳からのアイルランド留学日記

3ヵ月、ダブリン郊外の語学学校に通いつつ、ケルトの風に吹かれてくるよ〜

アラン諸島へ。3000年前につくられた砦“ドゥン・エンガス”から眺める大西洋は穏やかに煌めいていた

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今日はアイルランドに来ることを決めてからずっと憧れていたアラン諸島へ上陸する日。
司馬遼太郎の『街道をゆく〜愛蘭土紀行』にもある けれど、かつてアラン諸島の3つの島、イニシュモア、イニシュマーン、イニシィアは、漁に出るのも、海を渡って本島に行くのも、命懸けのところだった。
海で亡くなった男たちが自分の夫や父、兄弟だと判別するためにそれぞれ違う模様を編み込んだのがアラン・セーターの始まり。一つ一つの模様には意味があって、無事を祈る気持ちも一緒に織り込まれている。
おまけに、石灰質の岩盤で出来た島には土がなく、強風で土が飛ばされないように石塀をつくって畑を囲み、岩を砕いて海藻を混ぜ、粘土を敷いて土をつくったという。
そんな島になぜか人は憧れ、一番大きなイニシュモア(面積13㎢、人口1000人足らず)には年間20万人以上の人が訪れる。

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昨日から泊まっているSnoozeles Hostelは6人部屋でスーツケースを広げる場所もないけれど、パンと飲み物、シリアルの朝食は付いていて、2段ベッドの寝心地は悪くなかった。

何と言っても列車とバスの駅に近いのがいい。そして安い(2泊2人で€76。元々予約していたソルトヒルB&Bは2泊€180だったので、ベルファストまでの往復列車2人分€78を取り戻した計算!)。
2段ベッドで一度寝てみたかった、という娘も、私と離れて(上と下だけど)快適だった、と上機嫌。
だったが、急に「大変なことを思い出した!」。
この旅で初めての忘れ物。
「ジェインの毛布」のように、赤ちゃんのときから使っていた毛布がないと眠れない、と日本からスーツケースに詰めて持ってきた毛布をアンナハーヴィに忘れてきたらしい。
「捨てられたかな。あんなにボロボロの毛布だから、捨てられたかもしれないよね……」
一応メッセージを送って返信待ち。もし、なければ、赤ちゃんを卒業する日、ということだ(いったいいくつなんだ!)。

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予め予約しておいたシャトルバス&フェリー(往復で€34)の乗り場まで、ホステルから歩く。
それにしても凄い霧。天気予報では晴れの予報だったけれど、こんな霧で何も見えなかったら『ストレンジャー・ザン・パラダイス』になってしまう。
バスの運転手さんも怖いよな、と思っていたら慣れている様子。そのうち晴れて対岸の半島が見えてきた。

 

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フェリーが出るロッサヴィール港まで1時間、フェリーに乗り換えて50分、どちらも満員の観光客を乗せて進んだ。
9時半にゴールウェイを出て、イニシュモアに着いたのが11時半くらい。途中の海は穏やかで、イルカが泳いでいるのも見えた。

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 島にはレンタサイクル会社がいくつかあるが、一番近いところで借りる。
€10+デポジット€10。現金のみ。
娘はマウンテンバイク、私は前にカゴが付いているママチャリを選ぶ。
地図を見ながら出発。アイルランドで有名な3つの断崖の中でも怖いことで有名な断崖絶壁のある砦、ドゥン・エンガスを目指す。

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自転車は自分の足で進めるから快適。目に映る石塀、牛や馬、海を見るために時々止まりながらゆっくり進む。
アザラシが見えるので有名な海岸で、SPARで買ってきたパンとジュースで昼ごはん。

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気がつくと14時過ぎていて、先を急ぐ。まだ半分しか来ていない。
途中で馬車や島内ツアーバス、そして工事の車とすれ違うが、観光以外の車両はほとんどない感じ。

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そのうちカフェやアランセーターの店に人が集まっているのが見えてきて、ドゥン・エンガスが近い模様。自転車置き場もあって、さて、どっちへ行こうかと尋ねると、ここから20分歩くのだとか。

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フェリーの港から自転車で30分、とあったので油断していたけれど、あんまり時間がなくなってきた。センターで入場料€5を払って、丘を上る。途中までは整備されているが、ゴロゴロとした岩だらけ。ドゥン・エンガスは3000年以上前につくられたと言われている砦で、軍の要塞とも儀式の聖地とも言われているが、はっきりしたことは解明されていない。

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20分てくてく歩いて砦の石壁を抜けると、一気に青い海と空、断崖絶壁が広がった。
日によっては強風が崖に近づくのも妨げるというが、今日は大丈夫。崖に腰かけて大西洋を臨む。太陽と波の煌めき、砕け散る波と風の音に「遙か」という言葉が浮かぶ

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3000年以上前にこの島のこの丘に石を運んで積み重ね、ここを中心に政治・経済・宗教・生活を営んだ人々。
この島以外に人が生きる場所があるとか、地球が丸いとか、考えもしなかったのだろう。
土もなく、植物も育ちにくい土地で、海からの恵みと太陽、自身の力と知恵に頼って生き抜いた人々。

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ドゥン・エンガスの砦から降りると15時52分。
アイスクリームでも食べて休憩したいところだが、フェリーの出航は17時。ここは先を急ごう。
一番近い道を行く。上り坂が続き、おまけに工事車両と出くわして、道路中に砂利が敷かれている。なかなか進まない自転車。汗がジワジワ噴き出してくる。
途中で白い馬と出会ったり、写真を撮りつつもとにかく先を急ぐ。

上り坂の先には下り坂が必ずある。気がつくと娘は遙か先。自転車暴走族と化していた。

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港に着いたらなんと16時40分。慌てて自転車を返してフェリーに乗り込む。
結局、地元のパブやカフェには入れなかった。この次に来るときは一泊して、ここに住んでいる人の話を聞きたいなぁ。
でも、その前に、アイルランド語を勉強しなくちゃダメなのだった。

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ぺこぺこのお腹を抱えて、ゴールウェイのWest Endへ。
パブやレストランが軒を連ねるこの界隈は、ちょっと吉祥寺みたい。
何処に入ろうかと「モナリザ」というイタリアンのメニューをじっと見ていたら、上品な女性が「ここ、美味しいわよ。とくにシーフードが」と教えてくれたので、そこに入る。
言われた通り、海老の特製ビスクソース和えリングイネはとっても美味しかった。

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