55歳からのアイルランド留学日記

3ヵ月、ダブリン郊外の語学学校に通いつつ、ケルトの風に吹かれてくるよ〜

ドニゴールの長く温かい一日〜グレンヴェー国立公園からスリーヴ・リーグへ〜

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朝起きると、昨日までの雨が嘘のような青空。
これは、アンジェラの力かも。モハーの断崖に行った時もそうだった。アンジェラが「もう少ししたら晴れるから」と言ったら雲が流れていった。ダン・レアリーの海岸でアイスを一緒に食べていたら虹が出た。
アイルランドには、国立公園が13あって、その中でも最もダブリンから遠いのがグレンヴェー国立公園。私たちが行く予定だと知って、忙しい中やって来たのだった。
「日本の国立公園はいくつあるの?」と聞かれて、答えに困る私たち。コロンビアには53あるそうで、日本は調べたら33だった。

9時半に昨日交渉したフランシス・ヘンリー(タクシー・ドライバー)さんが来てくれて、アンジェラの泊まっている家まで迎えにいく。
Airbnbというサイトで探した宿で、ホストファミリーのように家の一部を貸してくれているらしい。
岬の先端で「部屋は広々、お姫様みたいなの」と言っていたので、それらしき家を探すと、凄いところへ行き着いた。

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鏡面のような湖(実際には運河)に佇むお城のような。鳥たちの囀りしか聞こえない。長いエントランスを抜けてやってくるのをしばらく待ったが、そこは閉館したホテルだった。

別の家でピックアップして、果物や飲み物を買いにスーパーに寄る。ドニゴールを移動するときは、食べ物・飲み物持参でね、とジェラルディン(ドニゴール出身の先生)に聞いたから。
果物を選んでいるとき、ふと、オーガニック人参が目に入り、フェニックス・パークを思い出す。グレンヴェー国立公園には野生の鹿がたくさんいるという。もし、遭遇したら、人参を持っているといいのでは?
アンジェラに尋ねると、“Yes!”と即決。果物やクロワッサン、人参を買って、いざ目的地へ。

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グレンヴェーまでは随分遠かった。フランシスは1時間と言っていたけれど、随分飛ばして1時間半。低い山々が広がる雄大で荒涼とした風景は、まさに手つかずの自然。
アイルランドの中でも最後まで氷河に包まれていた地域で、草木が生え出して1万年くらいしか経っていないらしい。
「自転車でも行けるのかしら?」といきなりフランシスに尋ねるアンジェラ。
本当はタクシーを貸し切るなんてしたくなくて(too expensive! と言っていた)、自分はバスで行く、と最後まで言っていたのだった。
最寄りの観光拠点、レタケニーまで行くバスはあっても、グレンヴェーまでのバスはない。車がなければツアーに参加するしかない。そのツアーもこの時期日曜日しかやっていないから、タクシーで行くしかない、と説明しても、最後まで“Let me try”と。

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“You can,……but it's high risk”とフランシス。確かに。道は荒野に一本線を引いてみたいなものだし、岩だらけで起伏もハンパない。

ビジターセンターからグレンヴェー城までは4km。時間もないのでシャトルバスに乗ったけれど(往復大人€3、学生€2)、アンジェラは歩いて行きたそうだった。

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湖に沿ってバスは行く。ひたひたに注いだグラスの表面みたいにたっぷりと澄んだ水を湛えている。
大した距離はなく到着。広大な自然の真ん中に、物語に出てきそうなお城。庭は整えられていて、食べられる植物がたくさんあった。そして、顔を出したのはクックロビン。

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この公園はアイルランドの中でもとびきり空気が澄んでいて、珍しい高原植物や蝶も見られるという。
鹿やキツネも棲んでいるが、フランシスが言ったように“They hate us”で、人参の出番はなかった。

城の周りを小1時間ハイキングして、岩の上でジャンプして写真を撮ったりした後(もちろん、ジャンプしたのはアンジェラだけ)、小高い丘で買ってきた果物やパンを食べる。こういうところで食べたいのはやっぱりおにぎりだなぁ、と思いながら。

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植物や岩、雲や風がダイナミックに本来の姿をさらしていて、「観光地化されていないのがドニゴールのいいところ」というジェラルディンの言葉が蘇った。

もっとここにいたい、と言うアンジェラを促して14時には出発。スリーヴ・リーグにも行くので長居はできない。
そこからがまた遠かった。2時間たっぷり。ほとんど何もない大地にほとんど往きかう車もない道を行く。ロードムービーのように、時速100kmでぐんぐんと。

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ところどころに、絵の中の風景のような家。
まるで終わりがないような、岩と水たまりのような湖だらけの風景を超え、スリーヴ・リーグに到着。途中のパーキングを通り越して、頂上近くまで行ってくれた。

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崖のそばには羊。壊れた囲いの中で草を喰む。
600mというアイルランド一度高いスリーヴ・リーグから大西洋を臨む。

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口数は多くないのに、とても温かく穏やかでチョコやナッツを勧めると喜んで食べてくれるフランシスに「写真撮ってもいい?」と尋ねると、車を降り、岩の上に乗ってくれた。

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スリーヴ・リーグを去ろうとした瞬間に見つけたのは見事な虹。アンジェラ・パワー、恐るべし。

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すっかり帰宅予定の17時を過ぎ、家路を急いでいると「人参、持ってる?」とアンジェラ。
私のリュックに入っていた人参を袋ごと渡すと、一本取り出し、「食べる?」。
なぜか左手にはオニオンディップを持っている。
タクシーの中で人参をポリポリ食べる女3人。“We are deers.”
“Francis, you can't eat carrots. Because it's high risk!”とアンジェラ。

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ドニゴール・タウンに戻ると18時半。
メーターを見ると€360くらいになっていたけれど、約束の€180に少し加えた€200でいいよ、とフランシス。急かすことも嫌な顔をすることも一度もなくつき合ってくれたフランシスをはじめ、人が親切過ぎてびっくりのドニゴール。
締め括りは、そーっと覗いた瞬間に“Come on!”と呼び込まれたBarでのLive。ギターのショーンとマンドリンのバリー。「ドニゴール・ソング」に「ゴールウェイ・ガール」を聴きながら“Out Cider”という名のシードルを“Sip!”と娘に勧めるアンジェラ。
「どっちが目が小さい? コロンビア人はみんな目が大きいから、私はよくジャパニーズ?と聞かれるんだけど」
「もちろん娘だよ、ほら」と二人が写っている写真を見せて、“No eyes”と言うと、“Just two lines!”と大笑いするアンジェラ。“No!”と娘。
酔っ払っているのか、いないのか。
気がつくと、ホールと思った店内はそのまま外と繋がっていた。でも、そこは芯からあったかかった。

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