55歳からのアイルランド留学日記

3ヵ月、ダブリン郊外の語学学校に通いつつ、ケルトの風に吹かれてくるよ〜

ダングロー2日目。何もないのに、何もかもがある

 

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Dungloe2日目。
起きるとトイレから娘が「トイレットペーパーがなくなった!」。
宿の主人にもらいにいくと、“Oh, no! Poor girl!!!!”と自分の娘のように心配顔。
「私は何をすればいい?」と、胃腸にいいジンジャーティーをたっぷり淹れてくれた。
アーダラに行くには11時のバスに乗るしかないが、とても無理。宿のチェックアウトも11時だったので少し遅らせてもらえないかと尋ねると「もちろん。何にも心配いらないから」。

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部屋で過ごす間にジェラルディン(ダングロー出身の語学学校の先生)にメッセージを送った。娘はちょっと体調が悪いけど、宿の主人はびっくりするほど親切で、Barも居心地が良くて、素敵なまち!と。
すると、返信が来て、お母さんが午後ショート・ドライブに連れていってくれるとのこと。
娘に聞くと、ジェラルディンのお母さんにも会いたいし、少しならまちを見たいと言うので、お願いすることに。

 

ジェラルディンはからだが大きくて、いつもヴィヴィッドなワンピースを着ていて、灯台みたいな人。明るくポジティヴで明晰で親切。どんな生徒も、どんな行為も、公平に認める。
先生という先生が好きじゃない娘が唯一好きだと言った英語教師。
いったいどんな風に育ったんだろう、と思っていたから、お母さんに会って話を聞けるなんて嬉しかった。
やって来たお母さんはジェラルディンよりずっと小柄だったけど、「よく来たわね、ダングローへようこそ!」とハグしてくれて、まずドニゴール空港へと連れていってくれた。
「ここでパラシュート・ダイビングをしたのよ。2年前」
チャレンジングなところはさすがジェラルディンのお母さん。

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ドニゴール・エアポートは実はお父さんの職場。飛行機のすぐそばに立って、離陸を見送っていた。海に突き出した美しい飛行場から小さなプロペラ機が飛び立つ様子をしばらく眺める。やっぱり、ここは時を超えている。
お父さんは飛行機を見送ると挨拶に来てくれて、コーヒーをご馳走してくれた。
エアポートの隣では牛が草を喰んでいる。ジェラルディンが「世界で一番美しい空港」と言っていた意味がわかる気がした。

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お父さんが運転してくれて、雨と風が強いなか、隠れ家のようなCarrickfinn Beachへ。車を降りて向かい風と闘うように進んでいくと突然砂浜が広がり、エメラルドグリーンの海が見えた。

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空はどんより雨雲が広がっているのに、海の色の綺麗なこと。
吹きすさぶ風に飛ばされそうになりながらワイルド・アトランティックを眺めた。

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そして、ジェラルディンの家の近くの海岸へ。
隣の家まで何十メートル(何百メートル?)も離れている家に住み、夏になるとビーチへ行って、橋から海へ飛び込んだという子どもの頃のジェラルディン。
「あれがその橋。ジェラルディンの橋」とお母さん。

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実はダブリンの出身で、帰り道に「ダブリンに帰りたい」と打ち明けてくれたお母さん。息子さんが病気で、ダブリンのほうがいい治療が受けられるのだと。
ダングローには仕事がなく、若い人はみんな出ていってしまう、とも。
ジェラルディンも18でダブリン大学に行くためにまちを出た。
私も18で故郷を出た。でも、ジェラルディンみたいに、綺麗なところだからあんまり人に教えたくない、なんて思ったことはなかった。
同じ北半球の、同じ島国の、同じ西の果てに生まれたのに。

なけなしの時間を割いて私たち母娘に、自分と娘のホームタウンを紹介してくれたマリー(お母さんの名前)。

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わずか24時間過ごしただけなのに、すっかり細胞に染み込んでしまったこのまちの空気。

宿に戻って、荷物をピックアップしたら6時近く。

何度も電話してタクシーを読んでくれたアンシア(宿の主人)といい、マリーといい、ダックランといい、ブレンダンといい……。

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いい人過ぎて、申し訳なさ過ぎて、また会いたいと思わずにはいられない。

ああ、こうやって、「彼」もここを再び訪れたに違いない。

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 次は自分の腕で運転して来よう、とアーダラに走るタクシーの中で思った。

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