55歳からのアイルランド留学日記

3ヵ月、ダブリン郊外の語学学校に通いつつ、ケルトの風に吹かれてくるよ〜

最後の晩餐は、やっぱりおにぎり!

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アイルランドで過ごす最後の一日。
どこでどんな風に過ごすか。考える余地はない。なぜなら、忘れ物を取りに行かなければいけないから。
タラモアの、アンナハーヴィファーム。
忘れ物は、娘の毛布。赤ちゃんの頃から使っていて、それがないと眠れない、とスーツケースに詰めてきたもの。
でも、初恋に夢中で忘れるくらいだから、もう卒業ってことでいいんじゃないの?
と言ったが、そのままにはできないらしい。
初恋の相手は馬のRupertだけど。

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スカイロン・ホテルからバスでヒューストン駅へ。

1926年イースター蜂起の舞台となった中央郵便局、独立の指導者たちの像、高くトンがったミレニアム・タワー、リフィー川、トリニティ・カレッジ……。

観光バスに乗っているみたいに、ダブリンの街を記憶に留める。

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タラモアの駅でタクシーを拾い、ファームのレセプション前で降りると、懐かしい匂い。窓越しにリンダを見つけて手を振る。
使い古した小さな毛布を受け取り、アイスランドのお土産と、残った日本の食材(わかめ茶漬)を渡し、「また来ます」と挨拶。
リンダは「もちろん。待ってる」と。
馬たちに会いにいこうと玄関を出ると、Rocky(ラブラドール)が尻尾をぶんぶん振りながら近づいてきて、馬のほうへと案内してくれる。

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厩舎に残っているのは数頭で、その中に最初に乗ったBasilがいた。
改めて見ると、なんて穏やかで優しい目をした馬だったのだろう。

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他の馬たちは外でのんびり過ごしていて、すぐにTwixを発見。名前を呼ぶと、ゆっくり近づいてきてくれた。
なぜだろう。前よりも関係が近くなった気がする。

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娘は最愛のRupertの名を何度も呼ぶが、猫みたいに奔放な馬はちらっと視線を向けるだけ。
馬たちは互いの首筋や鬣を舐め合ったり、ゆっくり散歩したり、気ままに過ごしている。
2週間ぶりだからそんなに変わっているはずもないけれど、馬たちの顔、匂い、ファームに満ちる空気、犬も猫も馬も人間も一緒に生きている感じ、すべてが、とても懐かしく愛しかった。

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たとえ学校を再訪してもクラスメイトには会えないけれど、ここに来ればみんながいる、と思うとほっとする。
でも、それは幻想で、次に来る時に同じものはない。
それは淋しいけれど、楽しみなことでもある。
すべては変わり続ける。

だから、いいのだ。

 

タラモアの帰りに、ニューブリッジで大切な人と待ち合わせ。
アイルランド在住で、滞在中ずっと私と娘を気にかけていてくれた料理家の松井ゆみ子さん。
そもそもアンナハーヴィのことを教えてくれたのは彼女だった。

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彼女が17年住んでいる家は光が綺麗に入る居心地のいい家で、テーブルの上にはおにぎりと卵焼き、人参のきんぴらとインゲンのお浸し、そして白菜漬けが用意されていた。
そして、サンドイッチと野菜ときのこがたっぷりのスープ。

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「おいしそう!食べていい?」とすぐに手を伸ばす娘。
私とゆみ子さんはワインで「スロンチャ!」。

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学校の話、食べ物の話、アイルランドの人々の話、リムリックのカルチャー・ナイト、トム・ペティ……。

丁寧に心を込めてつくられた手料理を食べて、飲んで、喋って、笑って……。

気がつけば夜も更けていて、大慌てで電車に飛び乗る。
アイルランド最後の日、すべてが満たされて、幸せだったね。
娘が深く頷いた。