55歳からのアイルランド留学日記

3ヵ月、ダブリン郊外の語学学校に通いつつ、ケルトの風に吹かれてくるよ〜

岩牡蠣には人生の歓びの半分が詰まってる

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土曜日の過ごし方はいつも迷う。
ダブリン発着の長距離バス・ツアーで地方に行くか、朝寝坊して午後芝居やLIVEを観に行くか、テンプル・バーのフード・マーケットに出かけるか、はたまたフェニックス・パークで鹿にオーガニック・キャロットをあげるか……。

結局朝起きてから、イベント情報をチェックし、テンプル・バーにあるスモックアレイ・シアターで12時からの芝居を発見。
芝居は“Breastfeeding Alfresco (and other adventures)”というタイトルのコメディで、女優さんの一人芝居らしい。
『ONCE』はともかく『Every Brilliant Thing』、『Man in the Woman's Shoes』と続けて観た一人芝居がさっぱりわからなかった娘は渋い顔。
「今度こそ笑えるよ、きっと」と説き伏せ、「芝居の後はフード・マーケットに行こうよ」と言うと、それが決め手になって大急ぎで支度して出発。

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Smock Alley Theatreは、なんと1662年に開館した劇場で、リチャード・ブリンズリー・シェリダン(Richard Brinsley Sheridan 1751年生まれ)という劇作家(であり政治家)の初めての作品『恋がたき(The Rivals)』を1775年に初演。
以来、この作品は240年以上に渡って上演し続けているというから、歌舞伎座みたいな感じだろうか(と、調べてみたら、歌舞伎座は1889年の開場。能や狂言の舞台に近いのかも)。

劇場の中では一番小さい地下の芝居小屋は、全然造りは違うけれど渋谷ジァン・ジァンをふと思い出させる。
でも、お客さんはまるで違って、ベビーカーに乗った赤ん坊がいっぱい。改めてタイトルをチェック。

「戸外での母乳育児」

そっか、これは乳母が巻き起こすコメディじゃなくて、戸外で母乳を飲ませる苦労と可笑しみ(?)の舞台だったのか。
主演の女優さんは現在まさに育児中らしく、自らの経験を話している様子。芝居というより保育相談的な雰囲気。赤ん坊はハイハイし、自分で歩ける幼な子はオモチャを取りに行ったり、自分のベビーカーを自慢したり。「これ、面白い?」とつつく娘。うーん……。

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結局、ブレイクタイムで小屋を後にした。
「もう来ないからね、芝居は」と娘。たぶん、もう少しゆっくり話してくれたら、内容的には難しくないから、もう少しわかるんだろうな。
でも、わかったところで面白くはなかっただろう。役者さんとしての技量が、前に観た芝居とは全然違う。ていうか、芝居だと思ったことも私の勘違いだったのかも。まあ、そんなこともあるさ、何事も経験、と気を取り直すべくフード・マーケットへ。

 

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テンプル・バーのフード・マーケットに来るのは4度目。
最初はダブリンに着いて最初の土曜日。次は日本からの友人と一緒に。3度目は……先週か。けっこう来てるな。
今日は牡蠣が食べたい気分。ちょっと贅沢して一人一皿初めて注文。
なんとなく顔を覚えてくれていたのか、いつも岩牡蠣を剥いている女性が「2つね」とニコッとしてくれた。

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果たして、岩牡蠣は最高に美味しかった。これまででいちばん身がふっくらとしていて、臭みがかけらもなく、ほんのりとした甘みと海のエキスが凝縮されていて……。
思わず、一服しに持ち場を離れた女性に「これ、すっごく、すっごく美味しい! どこの牡蠣?」と尋ねると、「スライゴー」という返事。さすが、W.B.イェイツの愛した土地。「でも、私は食べないんだけどね」。

ええっ。毎日(かどうかは知らないが、毎週土曜日にはここで)何100個もの牡蠣を剥きながら、自分は食べないって……。
でも、商売道具には手を出さないほうがいいのかも。
海の恵みそのものの牡蠣と白ワインをゆっくり味わいながら思う。
岩牡蠣には人生の歓びの半分が詰まってる。
そういえば、牡蠣って「海のミルク」って言うよな……と芝居をちらっと思い出しつつ。

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その後、つい気が大きくなってオーガニックのほうれん草や空豆、グースベリー、ミントやレタスを買っていると、先週買えなかったチーズケーキをどうしても買いたい、と娘。

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ストリート・ミュージシャンが哀愁のフラメンコ・ギターを奏でるなか「超美味しい」とすっかり機嫌を直したい娘が食べていると、後ろから「日本人ですか?」と声をかけられた。
振り向くと、トリニティ・カレッジのパーカーを来たティーンエイジャーらしき女の子。
日本のアニメやマンガが好きで、少し日本語を知っているという。
住んでいるのはフランスのナントで、家族でアイルランドを11日間旅行中なのだとか。
「東京喰種トーキョーグール」も「進撃の巨人」も「デス・ノート」ももちろん知っていた。マンガは日仏友好大使じゃないかと思う。
お父さんやお母さんとも話していると、またまたフランスがぐっと近くなった。

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毎週土曜日にはグランド・ソーシャル・クラブという店(前にアイリッシュ・ダンシングで行ったところ)でもフリー・マーケットをやっているというので、そちらにも寄り、男女兼用のナンチャッテお洒落ネクタイを買い、SPAR(コンビニみたいな店)で夕飯用のベーコンやチーズを買って、大荷物(ほぼ食べもの)でバスに乗った。

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