55歳からのアイルランド留学日記

3ヵ月、ダブリン郊外の語学学校に通いつつ、ケルトの風に吹かれてくるよ〜

Good Luck! Mr.3 VIP 〜Phoenix ParkとYamamori Sushi〜

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今日はアブドラ、アレクシと日本料理屋さんに行く約束をした日。

明日サウジアラビアに帰っていくアブドラの最後の日。

体調が戻っているといいなぁと願っていた日。

 

目覚めると、からだが軽い。
はっと思い出して、日本から持ってきたテルミー(お灸みたいなの)をやってみたら、ますますいい感じ。
アイルランドでは汗をかくことがなく鎮まっていた細胞が、テルミーの熱で蘇ってくる気がしてくる。
空腹を感じるのも久しぶり。昨日までは、もうこのまま回復しないんじゃないか……と思っていたけれど、からだって凄い。そして、なんてありがたい。バナナとりんごを食べて、いざ、出発。

 

外へ出ると風が冷たい。まるで木枯らしのよう。見慣れた木の葉も黄色く色づいていて、季節はすっかり変わったようだ。
学校へ着いて“Winter has come”と言ったら、ジュリアナ(先生)もホントね!と。

 

午前中で授業が終わって、午後はダブリン北西部にあるヨーロッパ一大きい公園、フェニックス・パークへ。アンジェラが鹿に人参をあげている写真を見て、一度行きたいと思っていたのだ。

アブドラも誘ったらOKだったので、一緒に学校を出る。
灰色の雲が覆っているのを見て「いい天気だね」とアブドラ。「雲が好きなんだ」と。
サウジアラビアでは毎日太陽を見ているからノーモアなんだそうだ。

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フェニックス・パークへはダン・レアリーのバス停から一本で行けるので、バスに乗る前にサンドイッチとコーヒーとオーガニックの人参を購入。
お腹が空いてないから何もいらない、とアブドラ。買い物に付き合いながら、荷物を持ってくれる。
ちょうどいいタイミングでバスが来て、2階の一番前に乗り込む。けっこう長く乗るはずだから、Harry’sのチキンサラダサンドイッチと人参スープも食べてしまおう。久しぶりのちゃんとしたランチは、手がかかっていて新鮮で、とても美味しかった。

 

1時間以上バスに揺られて公園に到着。707ヘクタールあるというから、メインゲートでレンタサイクルを借りる(借りるにはIDが必要。国際免許証を持っていてよかった)。
公園のど真ん中を突っ切るチェスターフィールド・アベニューを慣れない自転車でとにかく西の方向へ。ちょうど真ん中あたりまできたら、左手に鹿らしき影を発見。そこからは道なき道を一直線に、鹿に向かって自転車を走らせる。

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Fallow Deerと呼ばれる鹿は(日本ではダマジカ)この公園がつくられた1662年からいるらしい。というか、そもそもオーモンド公(Duke of Ormond)が“Royal Deer Park”としてつくった公園が1747年、整備されて一般開放されたとのこと。
最盛期には1300頭いたけれど、第二次世界大戦のときには40頭に減少し、いまは450頭いるらしい。


近づいてみると、『もののけ姫』で出てきたような、見事な角を冠した鹿たちが、人間が差し出す人参をもらって食べている。黒っぽい鹿、茶色の鹿、バンビみたいに白い斑点のある鹿……。

Fallowというのは枯葉色、角の色のことらしいが、時々黄金に光ってみえるそれは、近寄りがたい高貴さがある。
見とれている場合じゃない、せっかく持ってきた人参をあげなくちゃ、と袋から取り出し、少し投げてみる。
人参の方向に目をやり、ゆっくり近づいて食べる鹿。なんてかわいいのだろう。
すぐに食べ終わり、またこちらに目をやるので、今度は勇気を出して直接手であげてみる。人参は長めに持ちたいから一本丸ごと。そーっと差し出すと、近づいてきて、口をのばしてパクリと食べた!

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喜んでいるヒマはない。「おかわり」と言わんばかりに近づいてくる鹿に、あわてて次の人参を用意……していたら、何かがからだに当たった。角に突かれた!
あわてて新しい人参を渡して逃げる。逃げると言っても広大な草原、身を隠す場所はない。「後ろ、後ろ!」と娘。気がつくと鹿たちに囲まれていて、マンガのような光景に。

あっという間に持ってきた人参はなくなり、鹿たちももうないことを察知して、他の人参をもらいに移動していった。


ホッとしながら、自分の弱さを思い知る。人間なんて武器がなければ、ちっぽけ過ぎるほど弱い存在。最初に手にした石が、火が、手に負えないほど大きくなってしまったいま、動物たち、自然と、向き合うことの意味を思う。
自然がつくったダマジカの角の形は、神がかって美しかった。

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アブドラはといえば、離れたところで高みの見物。鹿に人参をあげたくはないらしい。

それが慣習によるものなのか、個人の意思なのかはわからないけれど、お腹が空いていなければ絶対に食べないし、やりたくないことはやらない。
公園も楽しんでいるのかいないのか、よくわからなかったけれど、ふと見ると自転車をわざと草むらで走らせたり、猛スピードを出したり、転んだりしていたから、それなりに楽しんでいたのかな。
でも、広大な、それほど手を入れられていない公園を自転車で走るのは、ものすごく気持ちよかった。

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そろそろ帰ろうか、レストランの時間もあるし……と話していたら、最後の日だからお店にプレゼントを買いに行きたいとアブドラ。
あわてて自転車を返しにいき、バスでシティセンターへ。お店の閉店もレストランの予約時間もギリギリ。でも、スワロフスキーをハシゴして、無事お気に入りのブレスレットを購入できた。よかった。

 

娘が3日間悩みに悩んで予約したお店は、「Yamamori Sushi」。Yamamoriは、ダブリンで一番有名な日本食レストラン。美味しいけれど高いという評判で、他のもっとリーズナブルな店と比べて最後まで迷っていたけれど、シティセンターに4軒ある中では、そこまで高くなさそうなその店を選んだのだ。
食べることに関しては、一食たりとも無駄にしたくないという娘、その迷い方は尋常じゃなかった。どうか美味しい日本料理がアブドラとアレクシの口に入りますように、と私も祈りつつ入店。


アブドラはカリフォルニアロール(アボカドとツナ)を、アレクシはスモークサーモンとクリームチーズの巻物を注文。
私は枝豆、焼き鳥、野菜天ぷらを、娘はサーモン&アボカドロールを注文。
出てきた巻物はけっこう大きく、もっと他のメニューも注文したかったけれど、アブドラもアレクシもお腹がいっぱいになった様子。
お料理はかなりちゃんとしていて、久しぶりの枝豆とビール(キリン!)は、とっても美味しかった。

アブドラはカリフォルニアロールと枝豆しか食べなかったけれど、ずっと枝豆を食べていたから気に入ったのだろう。

アレクシはどれも「ん〜!デリシャス!」と。とくに天ぷらと焼き鳥が気に入ったようだ。

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ひとりだけお腹が満たされない娘は、最後に“Nigiri”を注文。迷ったあげく、“Maguro”を頼んだが、出てきたのは、何故かしめ鯖。
「これはしめ鯖。鮪じゃないよ」と戻すと、厨房にいったん戻って、また「マグロですけど」と持ってきた。
また「違うよ」と言うと、フロアのチーフらしき女性が出てきて、鯖は“mackerel(マックロウ)”つまり、マグロと注文したのが鯖に聞こえたらしい。
「鮪を注文するなら、ここはアイルランド、英語でTunaと言って」という強気なチーフに、「もういいじゃん、しめ鯖、美味しそうだよ、食べなよ」と私。しかし、娘に聞く耳はない。
「私はしめ鯖を食べたかったわけじゃない!」


仕方ないので、メニューをもう一度持ってきてもらうと、“Maguro〜Tuna”となっている。
「だったら先にTunaと書くべきじゃない? ここは日本食レストランでしょ!」と強気で言うと、厨房に戻って鮪を持ってきてくれた。
“You win!”とアレクシ。はーっ。

 

長い一日が終わって、みんなでダート(電車)で帰る。
私たちにもアンジェラにも、先生のジェラルディンにも、バトラーズのチョコレートをプレゼントしてくれたアブドラ。
私たちは、折り紙のサルとコマと紙風船と花瓶をプレゼント。

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学校帰り、いつもピープルズ・パークに座っていた、からだも笑顔もビッグな友達。
言葉も風土も慣習も政治も文化も全然違う、でも、一緒に笑って一緒に歩いた、ニックネーム“Mr.3 VIP”。

いつか、また会える日はあるんだろうか。

でも、“アラーキ ラッゲタン(See you again)”。

その日まで、元気で、幸せでいてね。

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