55歳からのアイルランド留学日記

3ヵ月、ダブリン郊外の語学学校に通いつつ、ケルトの風に吹かれてくるよ〜

三日目、そして……さよなら、アンナハーヴィ・ファーム


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 アンナハーヴィ3日目の朝、やっと時差ボケ解消。もう旅もほぼ終わりに近づいているのだけど。

 ここで朝を迎えられるのも今日と明日だけ。光がキラキラしているうちに外へ出る。

 巣を作りたい放題のツバメたちは忙しそう。そして「コケコッコー!」とけたたましく朝を知らせる声がする。

 乗馬センターのスタッフの女性がやってきて、厩舎を開けると、ポーンと雄鶏が飛び出してきた。絵本の「ロージーのおさんぽ」さながら、農場の中を我が物顔に歩いていく。続いて、猫! ちっとも姿が見えないと心配していたら、やっと会えた。

 朝の光は本当に綺麗。目に焼き付けてから、写真も撮る。この農場がいつまでもこの光を湛えていますように。

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 朝食の時、いつも忙しそうなリンダの姿が見えたので、写真を撮らせてもらう。グランドドーターのラーラとアディーも一緒に。

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 昨日から体調の悪い娘は、朝食もとくに頼まず。朝方、夫を起こして水を汲ませたり、足を揉ませたりしていたのに気づいたけれど、私は任せて寝たふりしていた。

 午前中、ハードなレッスンはキツイので、フィールドにしてもらう。レッスンは乗馬の腕を向上させるためのもの。フィールドは散歩みたいなもので、楽ちんなのだ。

 午後はレッスンとフィールド、ハーフ&ハーフ。そういうのがオーダーできるのもいい。

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 今日も絵に描いたようにいい天気、いい景色。緯度が高いアイルランドの光は、色という色を際立たせる。その深さをしっかりと網膜に焼き付けながら歩く。今日ロンドンに帰ってしまうエリアも一緒だ。

 そのうち娘にとっては前回頭に棘が刺さって泣きそうになった茨のせせらぎの道へ。でも、今回は少しルパートが言うことに聞くようになってくれたようで、余裕の歩きだ。私のCobwebは必要以上にパシャパシャと蹄で水を蹴っていく。夫のTwixはやたら葉っぱを毟って食べながら歩く。

 アリーナに戻る直前、雨がポツポツ降り始めた。そして私たちが戻った瞬間、ザーッと強く降り出した。「パーフェクト・タイミング!」と先生。

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 パイ生地の上にトマトと玉ねぎとチーズを載せて焼いた美味しいペストリーとサラダでランチ。休む暇なく2時からハーフレッスン&フィールド。明日も1時間乗る予定だったけれど、けっこうハードだから、これを最後にしたほうがよさそうだ。しっかり味わおう。

 インドアでのレッスンはトロットでぐるぐる回った後、キャンター(駈歩)の触りを少し。久しぶりに鬣を掴む。でも、走らずにフィールドへ。午前中とは違う道を行く。

 以前は9月で刈られた後だった小麦畑。いまは実った穂がサラサラと金色にたなびいて、まさに「麦の穂をゆらす風」。さすがにこの中には入らないだろう、と思っていたら、真ん中のほうまで入っていって「さあ、トロット!」。

 このトロットを私は生涯忘れない。光と風と麦と馬。永遠のサークル。細胞の隅々にまでその空気を吸い込んでいると、後ろから娘の叫び声。

「一回止まって! ひゃーっ!」

 ルパートはトロットしながら麦をむしり食べるので、あやうく振り落とされるところだったらしい。でも、麦畑の真ん中だから、きっと大丈夫だったよ。

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 馬に乗っている時、完全な安全はない。車じゃないから躓くことも、草や木の葉をいきなりむしって食べることもあるから、ただの散歩でも、常にからだのどこかでバランスを取っていなくちゃいけない。ましてやギャロップやジャンプは一歩間違えれば大事に至る。

 でも、考えてみれば、もともと生きるってそういうこと。人間は安全をつくり出すためにものすごい時間と労力を使ってきたけれど、人間以外のすべての生きものは、危険と隣り合わせで生きている。

 猫が減っているのも、ロッキーの姿が見えないのも、自然な流れ。馬たちだって、これだけいたら毎年何頭かは見送るに違いない。

 

 シャワーを浴びて、タラモア・デュートニックウォーター割を飲みながらセブンブリッジ。昨日とは一転、やっと運が向いてきた。娘の体調も少しずつ回復の兆し。夕飯は手羽元とソーセージのグリル、茹でたポテトとサラダ。ポテトを食べると落ち着くなぁ。

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 アンナハーヴィの夜は早い。リビングでトランプの続きをやっていたけれど、9時になると誰もいなくなった。外はまだ昼間のように明るかったけれど、部屋に退散。10時半には寝てしまった。

 そして翌朝。さすがに早く目が覚めて散歩していたら、朝の光の中に神々しい2頭の馬。見とれていたら、こっちに向かって悠然と歩き出した。

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 申し訳ないくらいの美しさに頭を垂れる。

 ルパートと別れ難い娘は、タクシーを待たせたまま、何度も何度も鼻を擦り合わせていた。

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 大丈夫だよ、あなたは二十歳。これからも来ようと思えば何度でも来られる。でも、私たちは……。

 いやいや、そんなハードル飛び越えて、また来よう。

 そして今度こそキャンターに挑戦するんだ。

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