55歳からのアイルランド留学日記

3ヵ月、ダブリン郊外の語学学校に通いつつ、ケルトの風に吹かれてくるよ〜

See you again, my hometown!!

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 8泊11日(機内泊2日)の旅から戻ってきた。

 梅雨が明けてニッポンの夏。ふーっ。

 預けてきたマルチーズのマーくんを迎えにいったら、帰りに道端で下痢。大喜びというよりは、恨めしそうな表情で睨まれた。

 リヨン、パリ、ダブリン、タラモア、ダン・レアリー。タラモア以外は移動ばかりで、もっと小ぶりなスーツケースにしておけばよかった、と反省。大学を卒業する春にひとりでヨーロッパを回った時は確かバックパック。まだ寒かったけれど、持ち物、着替えは極力少なくしたはずだ。この次はもっと身軽にしていこう……と、早くも次を考えている。

 

 パリでは、友人の大塚恵美子さんがひと月滞在していたアパルトマンに泊めてもらった。ふだんからお洒落な大塚さん、パリを自分の庭のように歩いていて、お上りさんの私たちとは大違い。日本で素敵に暮らしている人は、パリでもどこでも素敵なんだなぁ、と当たり前のことを思った。

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 一日しか時間がとれなかったパリ。娘が行き先に選んだのは、エッフェル塔凱旋門(なんとベタな)。夫は、新しくできたアトリエ・デ・リュミエールでやっているゴッホ展。アパルトマンを出てメトロに乗り、エッフェル塔は仰ぎ見て、凱旋門は昇って写真を撮った。

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 娘はいまフィルムカメラに夢中で、なかなかシャッターを押さないから時間がかかる。シャンゼリゼ通りのカフェで休んだらもう3時半を回っていて、大急ぎでゴッホ展へ。

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 パリのメトロはスリが多くて危ない、とかつては言われていたけれど、いまはそうでもなさそうだった。所々でストリート・ミュージシャンならぬメトロ・ミュージシャンが演奏しているのもいい感じ。そしてゴッホ展、これが素晴らしかった。

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ゴッホの作品から500枚を選んで、50台のスピーカーから出る音楽とともに、140台のプロジェクターで映し出す。作品は動き、広がり、波打ち、上昇し、星のように降ってきて、一瞬たりとも静止することがない。私たちは好きな場所に立ちずさんで、あるいは寝転んで、作品を浴びることができる。

 ふつうの美術館とは真逆の体験、というか、体感。圧倒的な絵の迫力とともに、絵筆を持つ瞬間のゴッホの衝動、描いている最中の情熱、そして哀しみ、苦悩までもが伝わってくる。そこに、大音量のジャニス・ジョプリンサマータイム」やアニマルズ「悲しき願い」……。

 

 原画を観る体験と比べるわけにはいかないけれど、迷わず言えるのは、ゴッホがものすごく愛しく思えた、ということ。

 同時上映は、ゴッホが憧れ、夢見た日本の浮世絵アート。音楽は「戦場のメリークリスマス」。ぐっとこないわけがない。

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 パリでは焼け落ちたノートルダム大聖堂も観た。

 去年仕事で来た時、当たり前のように何度も見ていた尖塔が、いまはない。

 同じように見えても、すべてのものは移り変わる。

 それでも、人間には失敗から学ぶ力がある。

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 リヨンとダブリンは、たまたまStayCity Aparthotelというところに泊まったが、やはりキッチンが付いているといいなと思った。ちゃんとした料理をつくらなくても、自分で食材を調達して、切ったり、和えたりすると、旅がぐんと味わい深くなる。ダブリンのFallon & Byrneに2度目に行った時、「これ、日本に持って帰れますか」と尋ねたら、「日本? 行ったことある! フジロックで」とスタッフの女性。なんとダンナさまがホットハウスフラワーズのメンバーだった。びっくり!

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 最後の日は幸運にも土曜日。テンプル・バーのフードマーケットが開いていて、大好きだったスライゴーの生牡蠣を。そしてシェアハウスがあったサンディコーヴに移動して「Carllucio’s」でスパゲティ・カルボナーラ。留学中に美味しい!と思ったものを夫に食べさせる、という目的は果たしたものの、さすがに旅の最終日、夫の胃も疲れてきた様子で勢いがない。

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 店を出て海のほうへ歩き出すと、急に猛烈な懐かしさが込み上げてきた。

 たった10週間だったけど、日常を過ごした場所。鏡面の海。深く蒼い空。人間には描けない雲。生き生きとしたカモメたち。遠くにそびえる教会の尖塔。アイスクリーム。人懐っこい笑顔。

 2年前の夏、私たちは確かにここに、暮らしていた。

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 小走りでパヴィリオン・シアターへ。何度か通ったこのシアターからは定期的にお知らせが届くので、ちょうどクリスティ・ムーアのコンサートがあることを知り、発売初日にチケットを取ったのだ。松井ゆみ子さん(アイルランド在住の料理家)いわく「北島三郎みたい(に知らない人はいない)」な国民的シンガーソングライター。

 こんなに小さい会場でやるのは珍しいらしく、客席は熱気で溢れていて、そこに彼が登場した瞬間、その場の空気が気球のようにまあるく一つになって上昇した。

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 アコースティック・ギターを取り替えながら、20曲以上をたったひとりで。会場は大合唱と大爆笑の繰り返し。ああ、もっと英語がちゃんと聞き取れれば……と笑えない自分を残念に思っていたら、夫と娘は思いのほか楽しんだ様子。

「寝ると思うよ、ってずっと言ってなかった?」と尋ねると「だって、嫌いな曲も眠くなる曲もないし」と娘。夫は「英語はわかんないけど、すごく面白かった」。

 クリスティ・ムーア。大御所なのに、偉そうな素ぶりがかけらもないチャーミングな74歳。夫の胃の疲れも吹き飛んだようだった。

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 帰り道、「とうはいいね。日本に帰るとすぐ現実が待っていて(翌日から会社)。私はダブルで非日常だから」と娘。

 そっか。台湾から帰国してダブリンへ。ダブルで非日常なのか。へぇー。

 でも、日常は簡単に非日常に裏返る。その時、日常を作り出す力をつけるために、私たちは旅をするのかもしれない。

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 さて、今度来られるのはいつだろう?

 調べてみると、70歳くらいまでは乗馬も全然OKらしい。ということは……。

 まあ、いいや。あんまり気張らず、また来よう。

 ここは私の、勝手に決めたホームタウン。

 まちの変化も、自分自身の変化も受け入れながら、大切なものを追いかける情熱は惜しみたくない。

 幾つになっても、何があっても、夢に取り組む自由は誰にだってあるから。

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 というわけで、久しぶりに読んでくださって、ありがとうございます。

 また、いつか、お会いしましょう。

 See you again!!

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(帰ってきてからつくったうどん。やっぱ、ごはんは日本がサイコー!)