雨と強風と人生でいちばん美味しいフィッシュ＆チップス

水曜日なのに、朝から早起き。学校主催のショート・トリップでHowthへ行くためだ。
午後が授業の生徒は午前中に、午前が授業の生徒は午後にと、時間差で2本企画されたもの。
Howthには一度行ったし、午前中に行って帰ってくるなんて忙しい……と思っていたが、クラスメイトのマリエレナに誘われた娘が珍しく張り切って申し込み、私も付き合うことに。

天気はどんより曇り空。
そのうち小雨が降り出すなか、総勢9人で出発。DART（電車）で50分。北の終点がHowth だ。
ガイド役はサリーでなく、ジョシュアというハードコアパンク好きのナイス・ガイ。道すがらいろいろな話をしてくれて、電車がCroke Park Stadiumの近くを通過する際には、その歴史を。
Croke Park StadiumはU2のLIVEで行ったところ。8万人収容できる巨大なスタジアムで、ふだんはアイルランドの国技（ゲーリック・フットボール）しか行われないことは聞いていたが、そこが1920年血の日曜日事件の舞台だったことと結びついていなかった。

1920年11月21日の早朝、マイケル・コリンズ率いるIRAによって12人のイギリス陸軍士官が暗殺され、その報復として、英国の治安部隊がゲーリック・フットボールの試合でクロークパークで試合中の選手や観客に向けて無差別発砲、選手を含む14人の市民が死亡し、60人以上が負傷した事件。
1916年イースター蜂起首謀者の処刑、そして1920年のこの事件は民衆の反英感情に火をつけ、結果的にアイルランド独立への道を拓いていく。

「フットボールはイングランドの競技だからここではやらない」とジョシュア。

U2がその場所で「ブラディ・サンデー」を歌った意味を思い、（曲自体は1972年の事件を歌ったものだけれど）、世代を超えて、正義よりも痛みとして、語り続ける意義を思った。

 

Howthでは短い時間で見晴らしのいい場所まで歩き、港を見渡す。湾で泳ぐアザラシを見て、帰りはそれぞれランチを取りたい人は残ることに。

せっかくHowthに来てシーフードを買わないわけにはいかない。強風に向かって盾のように持った傘が壊れそうになるなか、海老700gとイカ300gを大急ぎで買って戻ったら、ずぶ濡れになった娘とアナンダ（コロンビアからのクラスメイト）がジョシュアお勧めのレストラン「CRABBY JOE」（私たちが前にテイクアウトした店！）の前で待っていてくれた。

二人はフィッシュ＆チップスを注文。私はシーフードチャウダーを。すると、アナンダが「ギネスか何か飲もうかな」。
さすがに昼間から、しかも授業の前にビールはまずいのでは、と思いつつ、アナンダだけに飲ませるわけにはいかないと、私も付き合うことに。
いつもは真面目なアナンダだけど、クラフトビールを選んで「このビール、すっごく美味しい」。そしてフィッシュ＆チップスに「これまで食べた中でいちばん美味しい！」。

コロンビアもつい最近まで内戦が続いてきた地域。半世紀にわたって22万人が殺害され、数百万人が行方不明になった。
ガルシア・マルケスが好きで、村上春樹が好きで、とくに『ねじまき鳥クロニクル』が好きというアナンダ。
作家になりたいという夢が、叶うといいな。

そして、いろいろな美味しいものに、これからも出会えますように。

午後の授業にはすっかり遅刻してしまったけれど、晩ごはんは買ってきた海老とイカと、アレクシが買ってきてくれた豚肉で三度目のお好み焼き。

マリエレナは初めてのお好み焼きに興味津々。

週末にはイタリアに帰ってしまう彼女とごはんを食べるのもたぶん今日が最後。古い家具のリノベーションをしていて、近く自分のWEBサイトを開設する予定だという。

そしたらWEBであなたの家具を見られるね、と言うと、「イタリアに来て見たほうがいい」とマリエレナ。

その時は鰹節とオタフクソースを持っていこう。