55歳からのアイルランド留学日記

3ヵ月、ダブリン郊外の語学学校に通いつつ、ケルトの風に吹かれてくるよ〜

サヨナラ、ドニゴール

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ドニゴール最終日に宿をとったのはArdara(アーダラ)。ドニゴール・ツイードを織る工房があることで知られる小さなまち。
ダングローからタクシーで30分(料金は意外と安く€35)、Woodhill Houseというゲストハウスに着いたのが夕方6時半。まちの中心地から丘を登ったところだったので、夕飯はゲストハウスのレストランで食べよう、と言っていたのに、そしてそれは予約サイトを見るととても美味しそうだったのに……ディナーはバナナとスコーンとりんごだった。
なんのことはない。私の怒りが沸点に達したからだ。

 

ダングローの2日間、娘の体調は悪かった。気持が悪いのがおさまったと思ったら頭が痛くなったようで、せっかくジェラルディンのお母さんがドライブしてくれたのに車から出ず、綺麗なビーチも見なかった。
でも、いくら悪くても、人の親切に応えられないようじゃダメでしょ! 笑顔もないし、英語もちっとも喋らないし!いつも私ばっかり矢面に立たせて。 私はあなたのツアーガイドじゃない! 


後から思えば、旅の疲れが沸点を超えたのだと思う。シェアハウスにいたときとは全然違う、見知らぬ土地、見知らぬ人、重い荷物を抱えての移動……。とくに、英語でのコミュニケーション。気疲れ。
結局その日は怒ったまま、持っていた食べものを食べて、寝てしまった。
ゴージャスなバスタブに浸かれたのが唯一の救いだった。

 

ところが真夜中、バグパイプの音が。0時から15分間、アイルランドというよりはスコットランドの丘を思わせる音楽を奏でていた。
ああ、ベッドじゃなく、宿のBarで聴きたかった……。

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朝、カーテンを開いてびっくり。私たちはなんて綺麗なところに泊まっていたのだろう。

ウッドヒルハウスは18世紀からのマナーハウス(領主の館)を改装してゲストハウスにしたところで、美しい広い庭と古い優雅な建物を持ち、そこから見える丘の景色は一枚の絵。
部屋から見えるパティオは、怒りも疲れも一掃してくれた。

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ゆっくり朝食を食べ、少し時間があったので庭を散策し、アーダラのまちへ丘を下った。主人に教えてもらった、農道を歩いて。

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緑が綺麗なのは空気が澄んでいるからだろうか。
目を移すたびにうっとりするような風景、美味しい空気。丘を下って、日曜日なのでほとんど閉まっている店をウィンドウ・ショッピングして、古いBarで一杯。

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“Nancy”という名前のBarは、200年前からやっているという。
アランセーターが似合うナイスガイが隣の席に座ったので「似合うね」と声をかけると、ダブリンの語学学校に通うドイツ人留学生で、今日ダブリンに戻ると言う。朝9時から夜6時まで勉強しているそうで、とても流暢な英語を喋っていた。
IT企業に勤めていて、英語は必須……という話を聞いて、アレクシ(かつてのシェアメイト)を思い出す。
よかったらダブリンまで乗っていく? と聞かれたけれど、ギネスを美味しそうに飲んでいたので、遠慮した(本当はバスを予約していたからだけどね)。

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ウッドヒルハウスに戻るまでの道は、いっそう光の粒が降り注いでいて緑も羊もふくふくしていた。この屋敷を、この風景を、200年以上守ってきた人々に頭が下がる。

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当主は怖ろしく腰が低く、丁寧で親切、気品漂う人で、若い頃の奥様との写真がまたカッコよかった。そして、荷物を預かってくれたうえに、バス停まで送ってくれた。

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アーダラからドニゴール・タウンへ。そして、一路ダブリンへ。
明日はアイスランドへと向かう。
窓の外を流れる景色をずっと眺めていると、虹が見えた。なんと4回も!

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虹。アイルランドで、いったい何度見ただろう。

ここで過ごした3ヶ月、忘れられない風景、そして人々の顔が、次々に浮かんで溢れ出した。
困っていると必ず声をかけてくれる人。
どんな小さな買い物でも“Hi! How are you?”と笑顔をくれる人。
何か尋ねると申し訳ないくらいに親身に答えてくれる人。
断崖、強風、砕け散る波、果てしなく続く道、草を喰む羊、牛、馬、海を照らす光、岩だらけの海岸、居心地のいいパブ、ギネス、フィッシュ&チップス、おにぎり、競馬、ギネスケーキ、B&B、シェアハウス、学校、公園、アブドラ、アンジェラ、アナンダ、ジェラルディン、ジョン、アレクシ、セシル……。
一人一人の顔、一つ一つの風景……。
厳しく美しい自然と、だからこそ、限りなく温かく優しい人々。
サヨナラ。
また、ね。

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