55歳からのアイルランド留学日記

3ヵ月、ダブリン郊外の語学学校に通いつつ、ケルトの風に吹かれてくるよ〜

アイスランドに吹く風は冷たかった

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ダブリン空港近くのホテルで一泊し、WOW airアイスランドに向かう日。
学校終了後、タラモア〜ゴールウェイ〜ドニゴールと回って、最後がアイスランド。なぜアイスランドなのか。
最初は娘の思いつきだったけれど、私は『LIFE』という映画と『鍋とフライパン革命』というドキュメンタリーを観て、興味を持っていた。
火山と氷の島。人口は34万人足らずで、温水プールが社交場、作家比率は世界一。
国民投票通貨発行権を市民の手に取り戻した国。
歌姫・ビョークを生んだ土地。
とにかく想像を超えるところだろう。なんと言ってもアイルランドからすごく近い。

 

旅も3週目に入るとさすがに疲れてくる。空港近くにとった久しぶりのビジネスホテルは、機能性は高くてもなんだか冷たかった。っていうか、本当に寒かった。
WOW airは安いのが自慢の英国の航空会社。その分手荷物が高い。娘のスーツケースを預け、私の小ぶりのスーツケースとバックパックは手荷物ですべて別料金。これ以上増やしたくないので、入らない荷物は着ることに。
マトリョーシカのように着込んだ私を冷たく見る娘。
ところが、娘のスーツケースは22kgで2kg超過。超過料金を尋ねると€20。いったん引き取り、空港で店開きを始める私たち。
重いパーカとパンツとレインスーツを引っ張り出し、なんとか重量クリア。
北極にでも行きそうな格好で歩く私たち。
それにしても、WOW airは手荷物や重量だけじゃなく、受付の女性も厳しいなぁ……。

ダブリン空港の免税店でウィスキーの品揃えの多さに感動し、最後のお土産はここで買える!……と見ていたら、時間の余裕がなくなり、搭乗口へ急ぐ。
ここからが遠かった。行けども行けども搭乗口は遥か遠く。羽田空港での山口行きを思い出す。なんとか飛行機に乗り込んだ時には汗が噴き出していた。

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2時間強のフライトで飛行機は到着。ダブリンと違って入国審査が厳しくないのがありがたい。
降り立ったケプラヴィーク空港は思ったほど寒くはなく、がらんと殺風景な場所だった。レイキャビクまでの直行バスを予約していたのに、荷物を取ったりしているととっくに時間を過ぎている。

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慌ててそれらしきバスを探すと、のんびりした返事のドライバー。もう一人別の客が着いているはずだから待つという。
後から気がついたのだけど、アイルランドアイスランドで1時間の時差があったのだった。

バスはいろいろな会社が運行しているが、荷物の追加料金がないのでReikyavic Sightseeingという会社のにしたが、お客は3人。背の高いドライバー・アルバートは、運転しながらずっと観光案内をしてくれる。
最近のアイスランドはとにかく物価が高く、ビールは1杯1200kr(アイスランド・クローヌル)以上するとか。1krはほぼ1円だから1200円。ええっ? 本当に?「信じられない……」と呟くもう一人の客・ウィリアムさん。アイルランドから来たと言う。
ハッピーアワー(夕方の時間帯)に入れば700krくらいで飲めるから、その時間帯を利用したほうがいいよ、とアルバート
ウィリアムさんは、アルコールは一切飲まないらしい。なら、いいじゃん。
あとは、ブルーラグーンは商業的すぎるからシークレットラグーンのほうがいい、とか、サウスアイスランド・ツアーは最高だとか。
その場でサウスアイスランド・ツアーを予約したウィリアムさんが降りた後、アルバートに「アイスランドで生まれたの?」と尋ねると「いや、ポーランド」と意外な返事。
「もうここに来て十数年になる。結婚して子どももいるからここにいるけど、もしも、もう一度選択するとしたら……アイスランドは選ばない。絶対に。ここは……too boring」

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空港からの道は確かにBoringという言葉が似合うかもしれない。でも、本当にそうなのかな。

 

バスはアパートの目の前で止まってくれた。明日申し込んでいるツアーのピックアップ場所を尋ねると、車から降りて、途中まで案内して教えてくれた。
予約する時、ホテルの値段の高さにびっくりして、安いゲストハウスにしたのだけれど(それでも4泊で48000円くらい)、それにしてもそっけない建物。
玄関のベルを押すと、管理人らしき男性の声が「どうぞ」と言ったきり。押すとドアは開いていて、振り返ると鍵があった。
トイレ・バスルームは共用。でも、広いキッチンがあって、ベッドもとりあえず2つある。なんといっても温かい。十分だ。
さて、晩ごはんでも食べにいこうか。昨日のホテルのルームサービスはあまりにそっけなかったので、今日はちゃんとしたものを食べたい。と、店を探していると、娘が「大変。パスポートがない」。
「バスの中で落としたんだと思う」
落とした? パスポートを??

 

バスを降りたところから部屋までもう一度見てまわり、手荷物の中も全部探したが、ない。
シャトルバスの会社に電話すると、まだバスは戻ってないから明日の朝までに確認できたら電話するとの返事。
ああ……。

 

娘の言う通りなら、たぶん車内にあるはず。でも、万が一なかったら?
日本大使館って、アイスランドにあったっけ?
再発行には時間がかかる。そのまま日本に帰るだけならともかく、私たちはいったんアイルランドに戻らなくちゃいけないし、航空券を取り直すとなると、いったい幾らかかるんだ……?

気分は真っ暗。計画が音を立てて崩れていく感じ。


とても外にごはんを食べにいく余裕もない。パスポートと一緒にデビッドカード、スーツケースの鍵までなくした娘のバカさ加減に怒り心頭の私。
ところが娘は「でも、思い出をなくすより、いいよね」。
思い出というのはカメラに入った写真だったりするらしい。
本当に、事の重大さをわかっているのだろうか……?

 

怒りが収まらずさまざまな言葉を並べ立てているうちに、でも、いのちをなくしたわけじゃないか……と思えてくる。
とにかく、食べるものは食べなくちゃ、と歩いて10分とキッチンに貼ってあった地図に書いてあった近所のスーパーへ。


どれもこれも高い。巻物メインで8つくらいの寿司が990kr。ヨーグルトとパン、人参スープを1個ずつとぶどうを買って4000円くらい。スーパーにはノンアルコール・ビールしか置いてないのも悲しい。
寒々とした、人通りのほとんどないまちをトボトボ歩きながら、心にも冷たい風が吹いてくる。
パスポートのことは明日考えよう。
既にダブリンが恋しい私だった。

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