55歳からのアイルランド留学日記

3ヵ月、ダブリン郊外の語学学校に通いつつ、ケルトの風に吹かれてくるよ〜

Good Luck! Mr.3 VIP 〜Phoenix ParkとYamamori Sushi〜

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今日はアブドラ、アレクシと日本料理屋さんに行く約束をした日。

明日サウジアラビアに帰っていくアブドラの最後の日。

体調が戻っているといいなぁと願っていた日。

 

目覚めると、からだが軽い。
はっと思い出して、日本から持ってきたテルミー(お灸みたいなの)をやってみたら、ますますいい感じ。
アイルランドでは汗をかくことがなく鎮まっていた細胞が、テルミーの熱で蘇ってくる気がしてくる。
空腹を感じるのも久しぶり。昨日までは、もうこのまま回復しないんじゃないか……と思っていたけれど、からだって凄い。そして、なんてありがたい。バナナとりんごを食べて、いざ、出発。

 

外へ出ると風が冷たい。まるで木枯らしのよう。見慣れた木の葉も黄色く色づいていて、季節はすっかり変わったようだ。
学校へ着いて“Winter has come”と言ったら、ジュリアナ(先生)もホントね!と。

 

午前中で授業が終わって、午後はダブリン北西部にあるヨーロッパ一大きい公園、フェニックス・パークへ。アンジェラが鹿に人参をあげている写真を見て、一度行きたいと思っていたのだ。

アブドラも誘ったらOKだったので、一緒に学校を出る。
灰色の雲が覆っているのを見て「いい天気だね」とアブドラ。「雲が好きなんだ」と。
サウジアラビアでは毎日太陽を見ているからノーモアなんだそうだ。

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フェニックス・パークへはダン・レアリーのバス停から一本で行けるので、バスに乗る前にサンドイッチとコーヒーとオーガニックの人参を購入。
お腹が空いてないから何もいらない、とアブドラ。買い物に付き合いながら、荷物を持ってくれる。
ちょうどいいタイミングでバスが来て、2階の一番前に乗り込む。けっこう長く乗るはずだから、Harry’sのチキンサラダサンドイッチと人参スープも食べてしまおう。久しぶりのちゃんとしたランチは、手がかかっていて新鮮で、とても美味しかった。

 

1時間以上バスに揺られて公園に到着。707ヘクタールあるというから、メインゲートでレンタサイクルを借りる(借りるにはIDが必要。国際免許証を持っていてよかった)。
公園のど真ん中を突っ切るチェスターフィールド・アベニューを慣れない自転車でとにかく西の方向へ。ちょうど真ん中あたりまできたら、左手に鹿らしき影を発見。そこからは道なき道を一直線に、鹿に向かって自転車を走らせる。

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Fallow Deerと呼ばれる鹿は(日本ではダマジカ)この公園がつくられた1662年からいるらしい。というか、そもそもオーモンド公(Duke of Ormond)が“Royal Deer Park”としてつくった公園が1747年、整備されて一般開放されたとのこと。
最盛期には1300頭いたけれど、第二次世界大戦のときには40頭に減少し、いまは450頭いるらしい。


近づいてみると、『もののけ姫』で出てきたような、見事な角を冠した鹿たちが、人間が差し出す人参をもらって食べている。黒っぽい鹿、茶色の鹿、バンビみたいに白い斑点のある鹿……。

Fallowというのは枯葉色、角の色のことらしいが、時々黄金に光ってみえるそれは、近寄りがたい高貴さがある。
見とれている場合じゃない、せっかく持ってきた人参をあげなくちゃ、と袋から取り出し、少し投げてみる。
人参の方向に目をやり、ゆっくり近づいて食べる鹿。なんてかわいいのだろう。
すぐに食べ終わり、またこちらに目をやるので、今度は勇気を出して直接手であげてみる。人参は長めに持ちたいから一本丸ごと。そーっと差し出すと、近づいてきて、口をのばしてパクリと食べた!

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喜んでいるヒマはない。「おかわり」と言わんばかりに近づいてくる鹿に、あわてて次の人参を用意……していたら、何かがからだに当たった。角に突かれた!
あわてて新しい人参を渡して逃げる。逃げると言っても広大な草原、身を隠す場所はない。「後ろ、後ろ!」と娘。気がつくと鹿たちに囲まれていて、マンガのような光景に。

あっという間に持ってきた人参はなくなり、鹿たちももうないことを察知して、他の人参をもらいに移動していった。


ホッとしながら、自分の弱さを思い知る。人間なんて武器がなければ、ちっぽけ過ぎるほど弱い存在。最初に手にした石が、火が、手に負えないほど大きくなってしまったいま、動物たち、自然と、向き合うことの意味を思う。
自然がつくったダマジカの角の形は、神がかって美しかった。

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アブドラはといえば、離れたところで高みの見物。鹿に人参をあげたくはないらしい。

それが慣習によるものなのか、個人の意思なのかはわからないけれど、お腹が空いていなければ絶対に食べないし、やりたくないことはやらない。
公園も楽しんでいるのかいないのか、よくわからなかったけれど、ふと見ると自転車をわざと草むらで走らせたり、猛スピードを出したり、転んだりしていたから、それなりに楽しんでいたのかな。
でも、広大な、それほど手を入れられていない公園を自転車で走るのは、ものすごく気持ちよかった。

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そろそろ帰ろうか、レストランの時間もあるし……と話していたら、最後の日だからお店にプレゼントを買いに行きたいとアブドラ。
あわてて自転車を返しにいき、バスでシティセンターへ。お店の閉店もレストランの予約時間もギリギリ。でも、スワロフスキーをハシゴして、無事お気に入りのブレスレットを購入できた。よかった。

 

娘が3日間悩みに悩んで予約したお店は、「Yamamori Sushi」。Yamamoriは、ダブリンで一番有名な日本食レストラン。美味しいけれど高いという評判で、他のもっとリーズナブルな店と比べて最後まで迷っていたけれど、シティセンターに4軒ある中では、そこまで高くなさそうなその店を選んだのだ。
食べることに関しては、一食たりとも無駄にしたくないという娘、その迷い方は尋常じゃなかった。どうか美味しい日本料理がアブドラとアレクシの口に入りますように、と私も祈りつつ入店。


アブドラはカリフォルニアロール(アボカドとツナ)を、アレクシはスモークサーモンとクリームチーズの巻物を注文。
私は枝豆、焼き鳥、野菜天ぷらを、娘はサーモン&アボカドロールを注文。
出てきた巻物はけっこう大きく、もっと他のメニューも注文したかったけれど、アブドラもアレクシもお腹がいっぱいになった様子。
お料理はかなりちゃんとしていて、久しぶりの枝豆とビール(キリン!)は、とっても美味しかった。

アブドラはカリフォルニアロールと枝豆しか食べなかったけれど、ずっと枝豆を食べていたから気に入ったのだろう。

アレクシはどれも「ん〜!デリシャス!」と。とくに天ぷらと焼き鳥が気に入ったようだ。

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ひとりだけお腹が満たされない娘は、最後に“Nigiri”を注文。迷ったあげく、“Maguro”を頼んだが、出てきたのは、何故かしめ鯖。
「これはしめ鯖。鮪じゃないよ」と戻すと、厨房にいったん戻って、また「マグロですけど」と持ってきた。
また「違うよ」と言うと、フロアのチーフらしき女性が出てきて、鯖は“mackerel(マックロウ)”つまり、マグロと注文したのが鯖に聞こえたらしい。
「鮪を注文するなら、ここはアイルランド、英語でTunaと言って」という強気なチーフに、「もういいじゃん、しめ鯖、美味しそうだよ、食べなよ」と私。しかし、娘に聞く耳はない。
「私はしめ鯖を食べたかったわけじゃない!」


仕方ないので、メニューをもう一度持ってきてもらうと、“Maguro〜Tuna”となっている。
「だったら先にTunaと書くべきじゃない? ここは日本食レストランでしょ!」と強気で言うと、厨房に戻って鮪を持ってきてくれた。
“You win!”とアレクシ。はーっ。

 

長い一日が終わって、みんなでダート(電車)で帰る。
私たちにもアンジェラにも、先生のジェラルディンにも、バトラーズのチョコレートをプレゼントしてくれたアブドラ。
私たちは、折り紙のサルとコマと紙風船と花瓶をプレゼント。

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学校帰り、いつもピープルズ・パークに座っていた、からだも笑顔もビッグな友達。
言葉も風土も慣習も政治も文化も全然違う、でも、一緒に笑って一緒に歩いた、ニックネーム“Mr.3 VIP”。

いつか、また会える日はあるんだろうか。

でも、“アラーキ ラッゲタン(See you again)”。

その日まで、元気で、幸せでいてね。

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パンツの行列と夏の終わり

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違う国、違う言葉、違う風習、違う文化……。
語学学校というところは、世界の広さ、多様性を、日常の中で感じさせてくれるところ。
当たり前だと思っていたことが、そうじゃない。
それは、人間ってものの本質への興味をかき立てたり、愛しさを深めたりもする。

 

朝、部屋のドアを開いたら廊下の手すりにパンツの行列。
そう言えば夜中に娘が騒いでいたな、凄いことになってる、って。
一階の玄関からキッチンに向かう手すりにはTシャツのオンパレード。
ふーむ。これはたぶん、夜に洗濯機を回していたレオの洗濯物。で、何でそんなところに干してあるのかを、推測する。
階下の大家さん(ほとんど不在)の広いキッチンを洗濯物干し場にしていたボーイズだけど(本当は大家さんのプライベート・スペースだから干しちゃいけない)、ビジネスの関係で急に泊まりに来た大家さんの息子さんに、そんなところに干すな、と言われたんじゃないか……。
この家に来てすぐの頃、酔っ払ってキッチンで長電話していた娘が怒られたのも、息子さんだったし。

干すな、と言われても、干す場所がない我がシェアハウスへの、これは密かなレジスタンス? それとも、単におバカなだけ?

そのうち、娘が怒り出した。

 

「酷くない? だって、シェアハウスなんだから、干す場所を提供するのは大家さんの役目でしょ。干すな、とか言う息子、あんまりじゃない?」

かくして、私は大家さんにメッセージを送ることに。
角が立たないように、レオが(たぶん、だけど)していることがダイレクトに伝わらないように、でも、もう少し融通してよ、大家さんなんだから……いう意図が伝わるように、注意深く英文を考える。

「いったいどこに干せと言うの!」 じゃなく、「どこに干したらいいか教えて」とか。
いったい何をやっているのか、私。ボーイズの世話をするのは私の仕事じゃない。
無事送ると、ヨシヨシと満足そうな顔の娘。自分で書いてくれよ。

 

9週目に突入したクラスは、ジュールというフレンチ・ボーイが一人増えて9人。
もう夏も終わりだから、生徒はぐっと減ってくる。
授業では、2つの言葉が組み合わさった単語を、絵に描いて当てっこするゲームを。
英語で喋っちゃダメ。絵に描くだけ。これが、なかなか難しい。
NecklaceとかStrawberryとかそれ一つで書けるものは簡単。
ところが、Seashellとか、Sea(海)で引っかかると、めちゃくちゃ時間がかかる。日本の波とフランスの波って、こんなに違うのか……とか、根っこの意識の違いが思い知らされるよう。
私が描いたTeapotも、伝わらなくて四苦八苦。形をとらえて描いている(はず)のに何で……?と思いきや、そもそも若者たちはポットでお茶を飲む習慣がないらしい。

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こういう授業だとみんなが打ち解けられて、とても楽しい。
学校にいる間に、クラスメイトともっといろいろな話をしたい思いが募る。

 

授業が終わってビーチに行くと、さすがのテディズ・アイスクリームにも並んでいる人は少なく、海は秋の気配を漂わせ始めている。

キッズ・コーンを食べていると、重い雲が覆うなか、泳ごうとしている人も。短い夏を惜しむように、水温16°でも果敢に海に入っていく住民たち。

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食あたり(?)から1週間。まだ食欲も体力も回復しないので、Punnetでリンゴとバナナとアボカドだけ買って家に戻ると、すっかり疲れてしまった。
「生姜ごはんつくったら、みんなに分ける? どうする?」とやたら張り切る娘だが、私はぐったり。毎日のようにお肉と野菜を炒めている食欲旺盛なボーイズに出すおかずも今日はつくれないし、ごはんだけっていうのも変でしょう、と頭を悩ませているうちに、結局アレクシだけ味見するということで話がまとまった模様。
炊き上がった生姜ごはんはイマイチで、豆ごはんのときのような“ツヤ感”がないと騒ぐ娘。考えてみたら、豆ごはんのときは私が洗米したのだった。豆と生姜の違いだけじゃなく、しっかり米を洗うのが重要なんじゃないか、と一つ発見。

 

イマイチの生姜ごはんを「ソーリー、ソーリー」とアレクシに出す娘。
私たちのおかずは、卵焼きときゅうりの酢の物とアボカドとちりめん山椒。
アレクシのおかずは、牛ひき肉の炒めもの(玉ねぎが入っていたらきっともっと美味しいのに、ただひき肉を炒めただけ)、マヨネーズ添え。
文化というよりは世代の違いだろうか……とも思いつつ、「マヨネーズは万能」と言うアレクシに妙に共感する娘。
アレクシはアサツキ(マーケットで見つけた!)入りの卵焼きを気に入って食べ、でも、きゅうりやアボカドは好きじゃない、と手をつけなかった。ちりめん山椒は一口食べたけど、これもお好みではなかった様子。


しみじみ、食欲のないときの和食に叶うものはないなぁ、と思う。
美味しくできたきゅうりの酢の物と卵焼きを食べながら、少しずつ胃腸が動き始めるのを感じる。
気がつくと、大家さんから返信。
「どうぞ、私の干し台を使うように伝えて。息子は朝5時にダブリン発の便に乗るから早く寝なくちゃいけなかったんだと思う」
シンプル。あれこれ気を遣ってメッセージの英文を考える必要はなかったのかも。
レオは「干すな」と言われたわけじゃなく、休んでいる息子さんがいるから気を遣って手すりに干しただけかもしれないし。
廊下に並んだままのパンツとTシャツの行列は、娘の正義というより乙女心に火をつけただけかも……と、締めの抹茶を飲みながら思い直すのだった。

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スカスカのウィークエンド

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根っからの貧乏性なのか欲深なのか、土日になると何処かに行って何かしなくちゃいけない気分になる。
前日までにバスツアーを予約したら大安心。していなければイベントサイトを眺めたりして「何か」を探す。
8月最後のウィークエンドは貴重、まだ行ってないニュー・グレンジ&タラの丘ツアーを申し込もうか、フェニックス・パークで鹿に人参をあげようか、Howthのクリフ・ツアーに参加するか、迷ったあげく、どれもやめて近場で地味に過ごすことに。体調も完全に回復していないし、たまにはこういうスカスカの週末も必要かも。

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土曜日はいつものテンプル・バーのフード・マーケットへ。
さすがにカキは避けて、小さなコロッケやリンゴ・スープに。リンゴ・スープにはちょっぴりウィスキーを入れてもらった。からだが温まって美味しい。
6月末、ダブリンに来たばかりの頃に行ったThe gutter book shopに行って、サリーが好きだと言っていたShamus Heaney(シェイマス・ヒーニー)の本を探す。
いろいろ調べてみると日本にも何回か訪れたことがあるそうで、代表作の一つ「digging」を朗読しているシーンも観ることができた。
北アイルランド、デリーのカトリックの農民の家に生まれ、隣人同士がいがみ合う中で血と銃弾の音に囲まれて育ち、「血の日曜日事件」(1972)をきっかけに南に引っ越したものの、土地と人間との繋がり、家族、居場所、平和……を考え続けた詩人。
ふっと福島の農民を思い出す。
Shamusというのは完全にアイリッシュの、カトリックの名前で、英語だとJamesなのだとか。刻印されたアイデンティティと時代の理不尽、人間の底に潜むものとペン一本で立ち向かった人……。
いろいろ揃っている中で、最初の詩集『Death of a Naturalist』(1966)の復刻本を買う。

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久しぶりに歩いて疲れたので、バトラーズで甘ーいホット・チョコレートを飲んで一服。店の外では馬車も一服。
こんな日は、劇場でゆっくりしたいなぁ、と『リヴァーダンス』のGaiety Theatreへ行ってみる。サイトではソールドアウトだったけれど、窓口ではアッパーサークルの一番上、見切れる席が空いていて、€26。
前に観にきた時とは違って舞台は遠かったけれど、客席の熱気が直に感じられ、全体のフォーメーションも観ることができて、また良かった。
頭と上半身は固定されても、腰から下は自由にはさせない。
火が出るような足の動きはレジスタンスそのものだ。

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そして日曜日。いつものピープルズ・パークへ行ってみると、ものすごい人、人、人。
昨日からやっている夏の終わりのウクレレまつり。

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小さな子どもからシルバーエイジまで、犬たちもたくさん集って、ピースフルな空気が燦々。

さまざまな地域からやってきた出演者の中で、たった一人でウクレレの弾き語りをしたミュージシャンがとてもよく、潤いのある深い声とウクレレの音があたり一帯に広がると、空もカモメも緑の木々も人々も一枚の絵の中でキラキラと輝いた。

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りんごやヨーグルトやきゅうりを買って帰ると、アレクシにばったり。やはりピープルズ・パークに行っていたという。
部屋には机もテーブルもないのでキッチンで折り紙を折っていると、見て「知ってる」と。
「じゃあ、折って」と1枚渡すと、ものすごく複雑なのを折り始めた。びっくりして見ていると、立体的な花瓶が完成。
「ユー・アー・ジャパニーズ!」と娘。


アレクシに折り紙を教えてもらいながら暮れゆく日曜日の午後。

ラジオからはずっとストーンズがかかってた。

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フライデーには豆ごはん

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8週目最後の金曜日。
サヨナラする生徒が今日は4人。ヴィクトリア(ベネズエラ)、ミレナ(イタリア)、カルロス(スペイン)、チボー(フランス)。
月の最終金曜日はテスト(先生たちが生徒の理解度を確認するための)がある日で、私にとっては2回目。前のクラスでは3割から4割しかできなかったけれど、今回は9割以上クリア。
自分で採点して「何点だった?」と見せ合うボーイズ。隣のラファエルに聞かれたら、伝言ゲームのように伝わって、アレッサンドロ(ジョンを困らす悪ガキイタリアン)が目を丸くして「マジで?」。
そうだよ。なんてったって、私はここに8週間もいるんだよ。
だからと言って会話がスムーズになったわけじゃない。ペーパーオンリー。でも、クラスメイトとして見てくれた感じで、ちょっと嬉しい。

 

休み時間には娘の手も借り、鶴を折ってヴィクトリアとミレナに。アンジェラにも頼まれて折った。アナンダは「知ってる!」というので折り紙を渡したら、途中でわからなくなっていた。
授業が終わってから、すぐに立ち去ろうとするクラスメイトを引き止めて記念撮影。
俺はいいよ、まだ帰らないし……というアレッサンドロも強引に入れて。
以前コーヒーを買いにいった帰りに、「シリアに行きたい」と言っていたミレナに職業を聞いたら、心理学をやっていて、心に傷のある子どもたちのケアをしているそうだ。
「セツコ、キスしていい?」と聞かれ、ハグ&キス。
わずか2週間だったけれど、鮮烈な印象を残してミレナは仕事に戻っていった。

 

体調はなんとか戻りつつあって、今日は久しぶりにごはんがつくれそうだ。
ジャパニーズ・ヘルシー・フード、豆ごはん。それと、キヌサヤの卵とじ。
この二つは、うどんと並んで、ほとんど何も食べたくない時にも食べられる。
Punnet(オーガニックの八百屋さん)でどちらも買ってあったので、いつもの店で(未だ名前がわからない)卵だけ買って帰ろうと店に入ると、“Hello, beautiful ladies!”と声をかけられ、「あなたたちにニックネームを付けたのよ。フラワーレディーズって言うの。大きいのと小さいの」。
以前、紫とピンクのグラデーションの格好をしていたら、「その色大好き!」って言ってくれた頭に花飾りをしている女性。彼女は「フラワーパワーがある」と言われているそう。
素敵な渾名をいただいて、嬉しい気持ちで店を後にする。

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帰り道、アブドラがいそうな気がして公園に寄ってみる。あ、いたいた。ほとんど追っかけと化している私だが、アブドラはにこやかに引き続きアラビア語レッスンをしてくれた。
I love you は、アハッ ピック。
I'm happy は、ア サイート。
I'm sorry は、アナ アーシフ。

綺麗だからもっと字を書いてほしい、とお願いすると、何を書こうか……としばらく迷って、my mother, my father, my brother, my sister, my son……と言いながら書き始めた。
“Your son?”と尋ねると、へ? という顔を一瞬して「違う違う」と大笑い。名前を書いているわけじゃなく、その言葉を書いていたのだった。


家族のこととか、ホームタウンのこととか書いて、と言うと、「expressionは苦手」。
家族のことを書くのも好きじゃないし、街のことも隣町には行ったことがないから……と。
好きな時間は? と尋ねると、「週末。土曜日は友達とドライブしてレストランに行って夜通し遊ぶから寝るのは朝5時。日曜日の昼間はずっと寝てる」。
サウジアラビアでは17歳から国内は運転できて、18歳になったら近隣諸国で運転していいのだそうだ。アルコールは禁止だから、友達と夜通しレストランにいても飲酒運転の危険はないわけか……。もっといろいろなことを聞いてみたくても、英語とアラビア語のグーグル翻訳はなかなか時間がかかる。
思いついて、鶴を折って日本語で「アブドラに幸あれ」とメッセージを書いて渡すと笑顔になって、ニックネームも書いて、と。
彼のニックネームはMr.3ヴィップ。今度会ったら、そう声をかけよう。

 

家に帰って、この週末でフランスに帰ってしまうクェンティンに声をかける。最後の金曜だからパブかどこかへ出かけるかと思ったけれど、今日は家でごはんを食べるというので、「豆ごはんのシンプル・ヘルシー・ジャパニーズだけど、食べる?」と聞くと、「もちろん」と。
最後の日くらい、みんなで一緒にごはんを食べたかったので、アレクシ、アイヴァンにも尋ねると、二人とも今日はパブへ行くというので、海で泳いで帰ってきたレオと一緒に4人でごはん。
さすがに豆ごはんとキヌサヤの卵とじだけじゃなぁ、と、冷凍しておいたサーモンと鮪を大急ぎで解凍し、焼くことに。味付けは生姜と酒と醤油と、みりんがないのでちょっぴりの砂糖。

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クェンティンとレオにはフォークとナイフとスプーンを渡したのに、箸で食べてみる、と言って二人とも初めての箸づかいに挑戦。
初めて食べるキヌサヤの卵とじも豆ごはんも、お代わりして完食。

最後まで箸を使ってくれたのは、二人の優しさだなぁと思った。
娘も三杯お代わりして、病み上がりとは思えない食欲を発揮。


クェンティン・タランティーノコーエン兄弟が好きで、宮崎駿の映画を観て泣かなかったことはない、というレオは、映画監督かフットボール選手に憧れている。
テニス、ラグビー、スキーが得意というクェンティンは経済を学んでいて、広告マーケティング等の業界に入りたいのだとか。

二人ほぼ同時にやってきて、フランスの出身地もたまたま同じで、いつも二人で料理して、クラスまで一緒だったレオとクェンティン。
クェンティンが1週間先に帰ってしまうと、レオは淋しいだろうなぁ。
すっかり寮母の気分で二人の若者に幸あれ、と願う。

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「アリヨン ホワヨーン ジャミール(今日は美しい日)」〜アブドラとアザラシとジョイス・タワー

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いまのクラスは総勢13人。今日は欠席一人で12人。大所帯。
コロンビア2人、ブラジル2人、イタリア2人、フランス3人、ベネズエラ1人、スイス1人、スペイン1人、日本1人。
年齢もそんなにティーンに偏ってないし、長く一緒の生徒もいて、疎外感がない。

午前の授業が終わって、ミレナ(イタリアン)に、「MUSASHIっていう日本料理店があるらしいんだけど、行かない?」と誘われたが、いまのお腹の調子では無理。
「来週だったら是非行きたいんだけど」と答えると、今週でイタリアに帰ってしまうから無理、と。ああ、残念。
午後は学校の遠足でジェイムズ・ジョイス・タワー・ツアーが企画されていたようで、アナンダに「行かないの?」と言われたが、近いとはいえ途中でお腹がゴロゴロしたらマズイし、午後はStudy Clubという補習みたいな個別レッスンを受けようと思っていたので、それも断る。

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今日から授業に出始めた娘は、Study Clubには消極的なものの、とにかくお昼が食べたいと騒ぐので、McLoughlin’s Barへ。あの店のスープなら食べられるだろう。

昼も夜もやっていて、あったかい飲み物も、ちゃんとした食べ物もある地元のパブに来るのは4回目。サンドイッチとスープのセットで€7.5と安いし、美味しいし、学校から近いし、本当に助かる。
今日はいつもの笑顔が素敵なオジさん(あえてそう呼びたい)じゃなくて女の人がカウンターに。いつもと同じようにセットで注文してサンドイッチは娘が、スープは私が食べるつもりが、単品として別々に来てしまった。
スープはパン付き。「パンはいらないの、ごめんね」と言うと、「大丈夫、問題ない」といつものオジさん。

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サンドイッチもチキンと野菜がどっさり入って美味しいが、今日の私には食べられない。
単品なのでリーフサラダも添えてある。モリモリ完食する娘。さすがだ。
ホッとする野菜のスープの名前を聞くと「フェッチ・スープ」と返ってきた。
パンには手をつけないでいたら、娘がしきりに美味しいよ、と言うので、そのまま捨てられるのももったいないし、ひと切れ食べて、あとは持ち帰りにすることに。
それなのに、お会計の時にはセットの値段に書き直されていたので、別々の値段に戻してね、と伝えると、「大丈夫、私のミスだから」と先ほどの女性。オジさんもウィンク。
カフェラテも頼んで全部で€10。申し訳ない。また来よう。

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1時45分〜のStudy Clubに間に合うように学校に戻ってみたら、今日は開かれないとのこと。前日までに申し込む人が誰もいなくて先生が手配されてなかった模様。ガッカリ。
すかさずサリー(イベントや生徒のオリエンを担当するスタッフ)が「あなたたち、ジェイムズ・ジョイス・タワーに行かない?」。
いったん断ったツアーだけど、ここは行くしかない。道中を不安がる娘(サンドイッチ完食しているし)を説得して参加することに。
こちらのツアーも参加者が少なかったようで、待っているとアナンダがやってきて、サリーと4人で出発。
ボーイッシュで犬が大好きなサリーに、「ジェイムズ・ジョイス、読んだことある?」と聞くと、「ない! 難しいし。私が好きなのは、Seamus Heaney!」と教えてくれた。
妹(姉?)の自動車事故死に遭遇、深く美しい詩を書く人なのだそうだ(調べてみると、1995年にノーベル文学賞も受賞している有名な詩人だった!)。

ピープルズ・パークで、このツアーに申し込んだ唯一の生徒、カルロスが合流。アナンダも今日の授業終わりに彼に誘われたのだ。
写真家を目指しているカルロスと5人で海沿いの道を歩いていると、ベンチに大きな後ろ姿を発見。おっ、あれはアブドラのはず。
「ジョイス・タワーに行こうよ!」と声をかけると、アブドラはすぐに立ち上がって「いいよ」。
「ナイス・キャッチ!」とサリーに褒められ、総勢6人でビーチの端っこにあるジョイス・タワーを目指す。
もうじきサウジアラビアに帰ってしまうアブドラともっと話したかったので、ラッキー。

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海を見ながら歩いていると、何か黒い影が。全員で目を凝らす。アザラシだ。
二頭、時々寄り添うように顔を上げている。しばらくアザラシを見つめる6人。
いつになく風はなく海は穏やかで、タワー近くの小さな入江では海水浴客がたくさんいた。

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タワーは無料で、1962年の開館からいままでボランティア・グループによって運営されている。
前に走って来たことはあるけれど、中に入るのは初めて。入り口で重い荷物は置いて塔に登る。
ワクワクするスパイラルの石段も、ブラーニー城に登った後なので、あ、もう終わっちゃった、と若干物足りない。

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でも、屋上から見える景色は360度のパノラマで、風も全てが心地よかった。
ナポレオンの侵攻に備えてあちこちに建てられたマーテロー塔の一つで、ここは1804年に建てられ、当時はハシゴで12フィート登って重い金属のドアを開けて入らなければならなかったそう。
壁は8フィートの厚さで、大砲がスパイラルのてっぺんのオーブンで温められたそうだ。

結局、この塔の大砲は使われずに済み、1904年にはお金を払えば住めるようになって、ジョイスの友人ゴガティが初めての間借り人になり、ジョイスはそこへ招待された。

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ジョイスは宿泊した6日目の夜に、ゴガティの友人トレンチが黒豹の悪夢を見て発砲したことがきっかけで出ていくのだけど、ここに来るまで、身の危険を感じて出て行ったのかな、と思っていた。

でも、ガイドさんの話や置いてあるリーフレットを見ると、
Joyce took the hint and left the tower immediately, never to return ”
とあって、全然違っていたことに気づく。
そのシーンから『ユリシーズ』が始まるところからも、トレンチの悪夢に出てきた黒豹は偉大な小説を生み出すきっかけをつくったシンボルになっているらしい。

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近いし、無料だし、いつでも来られると思っていたけれど、一人で来ていたらまた印象が変わっていたかも。クラスメイトやサリーと一緒に来られてよかった。Study Clubが中止になってよかった。

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サリーと別れて帰り道、アナンダがソフトクリームを買ったこともあって、ベンチで5人でまったり。
あ、そうだ、とノートを取り出し、アブドラにアラビア語を教えてもらう。
Hello はアルハバン。
Thank you はシュークラム。
右から左へ書くアラビア語は、不思議でとても美しい。
最後に、「今日は美しい日」と書いてもらった。
アリヨン ホワヨーン ジャミール

しまった、I love you を忘れた。
帰るまでに、聞いておかなくちゃ。

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乙女とフルーツ&ベジの癒し効果

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男飯のおかげか否か、少し回復してきたので頑張って授業に出ることに。
朝からパン・プディングをつくり、たまった洗濯物をして、まだ頭が痛いという娘を残して家を出た。
たった二日寝込んだだけで、いつもの道が遠く感じる。

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久しぶりの授業は新鮮。新しいクラスメイトが二人増えていた。一人はチボー。フランスから。
今週は今日を含めて残り3日。それが終わるとあと2週間。やっておかなくちゃいけないことがあるんじゃないかと気持ちは焦る。
そうそう、昨日寝ながら思いついたことがあったのだった。
アンジェラもアナンダも母国語はスパニッシュ。娘が最初のクラスでやっていたように、簡単な言葉を教わりたいと思ったのだ。

休み時間にアンジェラに言うと、「もちろん!」と早速ノートの一番上にSPANISH BY ANGELAとタイトルを書いてくれた。

 Hello は Hola オラ
 Thank you は Gracias グラシアス
 Good morning は Buenos dias ブエノス・ディアス
 Good night は Buenas noches ブエナス・ノーチェス
 Please は Por favor ポル・ファヴォール
 I’m sorry は Lo siento ロ・シエント
 I love you は……と言ったところで、ベネズエラから来ているヴィクトリアも含め三人のガールズが相談し始めた。

聞くと、I love you に相当する言葉が4種類くらいあるらしい。「いや、それじゃないでしょ、こっちでしょ!」「ちゃうちゃう!」と話している様子は完全に女子会。
ようやく Te amo テ・アーモ と Te quiero テ・キエーロ(こちらのほうが軽い)に落ち着いて、最後におさらいで読み上げると、「テ・アーモ」のところで全員が“Oh”とか“Humm”とか、ため息の嵐。
なんて乙女なガールズなんだろう。

 

15分のお休みがすっかり私に取られてしまったアンジェラは、ジョン(先生)がやってくるや「食べていい?」とライスケーキ(日本で言うポン菓子を固めてチョコレート・コーティングしたスナック)を取り出して、ジョンが「誰にも止められないよ」と答えるとパクリ。食べようか飲もうがトイレに行こうがOKだけど、寝てるとさすがに“Good morning!” と言われるのがここの授業。


3日も休んだせいか、8週目に入ったせいか、一人一人のやる気や真面目さがハッキリと見えてくる。コロンビアやブラジルや日本など遠くからわざわざ来ている生徒はけっこうやる気があるけれど、フランス、イタリア、スペインなどの近場は人による。

長い夏休み、余らせているエネルギーを留学でもして使ってこい!とお尻を叩かれてきた学生も少なからずいそうだけれど、それはそれ。

フランスから1時間半、スペインからは3時間(どちらも地域によるだろうが)と聞くと、本当にご近所でうらやましいなぁと思う。

 

朝からの家事と(洗濯しかしてないが)久しぶりの授業で終了時にはかなり疲れて、晩ごはんのことも考えられない。
でも、ヘビーなものは食べられないし、果物だけ買って帰ろうと、サンディコーヴの駅の近くにあるPunnetというお店に行ってみる。
オーガニックの果物や野菜が置いてあって気骨がある、松井さん(料理家)オススメのお店。

着くと、たくさん並んだ果物たちが私を待っていてくれた。

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苺、りんご、桃、スモモ、ぶどう、グリンピースに玉ねぎ、トマト……。
選んでいたらなんだか楽しくなってきて、素敵な紳士が「何これ?」と味見して「美味しいねー」と言っていたものまで購入。名前はダムソン(damsons)。「美味しいの?」と紳士に聞いたら、「食べてみ」と言うので、店員さんを経由せず勝手に味見。甘酸っぱくてブドウのようなプラムのような。
りんごでもなんでも、一つから買えるのでありがたい。
スーパーバリューじゃなくこっちに来てよかった。やっぱり、大手スーパーより個人経営の小売店のほうが好きだなぁ。
地元の反農薬八百屋さんを思い出したりして、買い物袋いっぱいに買い込んで家に帰る。

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娘は珍しく部屋で勉強をしていた(し始めたばかりだったかもしれない)が、買い物袋を開けると「随分たくさん買ってきたね」と並べ始めた。

うーん。眺めるだけで幸せ。
農薬がかかっていない苺の甘い香りに、部屋もリフレッシュ。

ああ、今日もいい日だ。

 

弱ったときの、“男飯”?

8月21日。
夜中にハッと目を覚ます。胃のあたりがなんとも気持ちが悪い。起き上がるともうダメだ、トイレに直行。
うーん、昨夜遅くに食べたサーモンの鮨があたったのか。コークからのバスの車内が妙に寒かったせいか。わからないけど、頭は重く冷や汗が出てくる感じ。前に風邪をひいたときの何倍も体調が悪い。スヤスヤ寝ている娘をうらやましく眺めながら、何度も起きてトイレに行った。

 

朝起きると娘も体調が悪いという。仕方ない。学校はお休み。一日中寝て過ごした。食欲は全くなし。
お茶を淹れに行った娘はシェアメイトのアレクシに会い、“How are you?”と挨拶され、“I feel sick”と正直に答えたら、「それは大変。欲しいものとかあったら、アレクシ!って呼んでね」と言われたとか。
なんてありがたい言葉だろう。


助けを求められる人がいるというだけで、気持ちも体調も違ってくるものだ。

結局朝から緑茶と梅干ししか食べられず。具合が悪いとき、動物は食べない。身体中の水分が出切って気分はスルメ。
夜になって多少お腹は空いてきたものの、とても何かをつくる元気はなく、お腹が空いたと騒ぐ娘に「クラッカーでも食べたら?」と言って寝続けた。


寝ていると、夫とスカイプをする娘の声。
「いまクラッカー食べてる。とうのハンバーグが食べたい。目玉焼きが乗ってるやつ」
病みあがりに、どんだけ脂っこいものが食べたいんだ! と思いつつ、夫のハンバーグはおふくろの味なんだろうなぁ、と思った。

 

8月22日。

朝の授業に間に合うように早めに起きたものの、立ち上がるとまだフラフラする。先生の話を聞いていればいい授業ならなんとか受けられても、会話の多い授業はちょっと無理。仕方なく今日も休むことに。
金曜日も入れると3日も休んでしまった。ジェラルディンやジョン、アナンダやアンジェラに会いたいなぁ。

そして、緊急事態発生。最後のトイレット・ペーパーがなくなった。これはアレクシに頼むしかないよね……。娘はすぐにもらって来て、「何か買ってくるものとか、食べたいものがあったら言ってねって」。
昨日に続いてアレクシが神様に思える。料理なんてほとんどできないのに。

 

昼前にやっとフラフラが収まり、お腹が空いてきたのでキッチンに行ったらアレクシがいて「これからライスとナゲットをつくるけど、食べる?」と。
「味噌汁をつくるから、大丈夫。ありがとう」と答えたものの、ライスが気になって「どうやってつくるの?」と尋ねると「うーん、僕はまだ一度もライスをつくったことがないんだ」。
「じゃあ、私がつくるよ」と言ったとたん、「つくらないほうがいいよ。食あたりならまだしも風邪だとうつすといけないし」と娘。確かに。

 

ライスだけちょっとちょうだいね、と言って、狭いキッチンに一緒にいるのもなんなので、部屋に戻ると、しばらくしてノックの音。
なんと丼にボイルドライスが大盛りで、その上にナゲット。それが二つも。さらにケチャップとマヨネーズも添えてある。

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申し訳ないので一つありがたくいただくことに。
ナゲットはとても食べられないと思ったものの、目の前にすると食べられるもので、オーブンでカリッと温めたナゲットは意外に美味しかった。塩味のついたライスも不思議にいける。
初めてのナゲット丼、たぶん一生忘れない。

 

そして、夜。なんだかキッチンが騒がしい。
娘がお茶を淹れに行くと、なんと5人のボーイズがキッチンにひしめき合って料理をつくっているらしい。すかさずアレクシが「つくったら持って行こうか?」と言うので、「サンキュー」と答えたらしい娘。
再びノックの音がして、ハンバーグとパプリカと玉ねぎと人参をニンニクで炒めてどーんとライスの上にのっけた丼が二つ。レオとクエンティン作だとアレクシ。
「イッタダキマース?」

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ありがたくて可笑しくて、涙が出そうだった。