西海岸の学生の街、ゴールウェイにやって来た
朝、起きると快晴。昨日の長雨が嘘みたい。アンナハーヴィ・ファームでの最後の朝食を終えて、ゲストハウスの責任者、リンダに挨拶。
本当に素晴らしい5日間だったと礼を言い、「暖炉のそばの絵は、ひょっとしてヘンリーとあなた?」と聞くと、「違う違う。はい、あげる」といきなり絵を持ち上げた。
「へ? これはここにある大切な絵で……」と言うと、「大丈夫、だって私が描いたんだもの」と。
思いがけないプレゼント。でも、それでなくても大荷物。一瞬ためらったけれど「ありがとう!!」と気がついたらしっかりもらっていた。
大事に持って帰らなくちゃ。
小さなスーツケースになんとか納めて、馬を見にいく。でも、厩舎は空っぽ。外に出てみたら、昨日と同じ場所に、いたいた!
昨日からずっとここにいたのか。私のTwixは見事に泥だらけ。でも、どの馬も朝日を浴びて幸せそうだった。
馬たち、そしてロッキー(ラブラドール。ホスピタリティ溢れるここの主)にお別れを言って、昼にはタラモアの駅へ。ここからゴールウェイへと列車で向かう。片道で大人1人€22.7。アイリッシュ・レイルは往復でもそんなに値段が変わらないのが不思議なところ。
ほとんど駅員さんのいない駅だけど、ダブリンとゴールウェイを繋ぐ唯一の列車。乗降客はそれなりにいて、混雑して座れない人も。
1時間半、少しずつ変わっていく景色を眺めながら馬のことを考える。
エヴリン、サム、パディ、3人のインストラクターに乗馬を教えてもらったけれど、みんなが共通して言っていたのが「エネルギーを循環させる」ということ。
馬を走らせるときはとくに“reign (手綱)”と“neckstrap”だけじゃなく、鬣をむんずと掴むことが大事。そして休ませるときは手綱を緩めてからだに触る。馬の体温を感じるのだ。
ああ、また馬の鼻先を撫でたいなぁ……と思っていたら、娘も同じことを呟いた。
もう「アンナハーヴィに帰りたい」なんて言っている。
でも、本当に「帰りたい」と思わせる場所だ。
ゴールウェイは西海岸にあるアイルランド第3の都市で、学生が人口の3分の1を占める街。といっ人口は7.6万人。私が住んでいるまちと変わらない小ささだ。
でも、メイン・ストリートは観光客でいっぱいで、路上ミュージシャンもいて、久しぶりにダブリンのグラフトン・ストリートを思い出した。
光や風がカリフォルニアみたい。
海の幸のパスタを食べて、色鮮やかなまちを散歩していると川のほとりに出た。川面はキラキラ輝いて、カモメが人に近い。
今日は30年以上ぶりのホステルに泊まる。
ゴールウェイには駅の近くにたくさんホステルがあって異常に安い。予約していたB&Bをキャンセルして急遽こっちにしたのだ。
2段ベッド、押さえていないと水が出ない蛇口、荷物を広げる場所もなく、ああ、ホステルって確かにこんな感じだった……と懐かしく30数年前にヨーロッパをバックパックで旅したことを思い出す。
明日はアラン諸島に渡る。