55歳からのアイルランド留学日記

3ヵ月、ダブリン郊外の語学学校に通いつつ、ケルトの風に吹かれてくるよ〜

大自然と人間との壮大な物語〜サウス・アイスランド〜

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実はこれを書いているのはダブリン。アイスランドは欲張り過ぎて、とても書く時間がなかった。だから日記じゃないけれど、書いておかないと。あのヴィヴィッドでダイナミックな自然の営みを目の当たりにした日々を。

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アイスランド4日目。この日は6泊7日の滞在の中でも、いちばん綺麗な一日だった。
ゴールデン・サークルに続いて一日バスツアー。行き先はサウス・アイスランド。着いた日のシャトルバスのドライバー、アルバートのオススメの場所。天気は昨日から一転、快晴。3時間睡眠でなかなか目が開かないなか、頑張って支度をして出かける。
催行会社はゴールデン・サークルと同じBus Travel Iceland。Get Your Guideという同じサイトで申し込んだら、少し割引があってラッキー。

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ガイドさんはクラウディアという名の女性で、社会学を学んでいる大学生。アイスランドは物価が高いから、働かないと大変なのだとか。調べてみると、アルバイトでも時給3000kr〜らしい。確かに物価が高いということは、その分お給料も高いけど、働かないと食べていけないということ。だからどのレストランでもお子様メニューがあるし、交通費や入場料は12歳未満は無料、12歳から15歳は半額だったりするのか。
女性と男性の平等は法律で規定されていて、企業は従業員の4分の1は女性を雇わなければいけないし、産前産後のお給料ももちろん差をつけてはいけない。
つまり、働かないと生きていけない国なのだということ。

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最初はスコガフォス。バスから虹がかかっているのが見えた。近づくと凄い水の量。高さがあって威厳がある。登り口があり、上から滝を眺めることができるが30分で登って帰ってこられるか。でも挑戦してみよう、と登り始めたら、傾斜がきつくて大変だった。
観光客同士、頑張れ、とすれ違いざまに声をかけ合いながら登る。でも、滝は下から見たほうが壮大かな。

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ミールダールヨークトル氷河。氷河の上を歩く人は重装備。私たちは観るだけ。ここは一年中氷が溶けない場所。近づくと気温がぐんと低くなる。

Vikingが降り立った海沿いのまち、Vik(ヴィーク)で食事。
いわゆる何でもある観光地の学食みたいなレストラン。チキンカレー2300kr。高いけどしかたない。ビールも飲みたいけど高いから我慢して、レジでコーラを二人で1本注文。と、これがいけなかった。ビンをトレイに載せると滑りそうだから右手に持ち、左手にカレーを載せたトレイを持って席に着こうと動き出した瞬間、トレイの上をカレーが滑って移動した。
バランスを崩したトレイは片手では修復不可能。カレーはそのまま滑って、床に落っこちた。

覆水盆に返らず。割れたお皿を集めていると、スタッフさんがやってきて「大丈夫。片付けは任せて」。
ああ。それにしても。2300円のカレーが……。
今日は昼ごはん抜きでいいや、と思って席に着いたら娘がオカンムリ。どれだけ不注意なのか、カレーが食べたかった……とさんざん文句を言われ、結局同じものをまた注文することに。
4600円のカレーはほとんど味がなく、塩をふって食べた(カレーは暑い国の食べもの。アイスランドには向かないと思う)。

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でも、もし食べなかったら、この味もわからなかったし、食べなかったチキンカレーはずっと記憶に残るけど、2300円のことは忘れられるよね、と娘と納得し合う。
Vikの海岸は、息を飲む美しさだった。

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レイニスファラは、北アイルランドジャイアンツ・コーズウェイにも似た巨大な奇岩が並ぶ海岸で、ジャイアンツ・コーズウェイ以上に石柱がきっちりと並んで人間を見降ろしていた。鳥たちは近づくものがいないこの岩の上で巣をつくるのか、たくさん飛んでいた。

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砂浜は黒。溶岩が固まって砕けてできた色。そして美しい波は荒く、人を連れていくから決して近づいてはいけないとのこと。
アイスランドの中でも最も危険な海岸の一つらしい。とてもそうは見えない美しさ。

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ここで1時間半も過ごせるなんて嬉しい……とすっかりのんびりしていた私を呼ぶ娘の声。
「時間ないよー!!」
いけない。ガイドさんがバスの中で“half an hour”と言ったのをすっかり「1時間半」と記憶していた私。娘がパスポートをなくして以降、私が上だった母娘関係がすっかり逆転してしまった。

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最後はセーリャラントスフォス。
快晴に恵まれたからこその完璧な虹。
とても、人間が生み出せないもの。
水飛沫でびしょ濡れになりながら滝の裏側に回る人々。
消えない虹を眺めながら、人間が決して創り出せないものの大きさ、美しさを思った。

最後に、クラウディアが話してくれたお祖母さんの話。
大きな火山の噴火があった年。その土地に住む住民は、有毒ガスが立ち込めて、家に帰ることができなくなった。

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無理をした男性が一人ガスを吸って亡くなった。その時、クラウディアのお祖母さんはどうしても取りに行きたい大切なものがあって、家に戻ったのだという。
でも、お祖母さんは無事に戻ってこられた。
実は、お祖母さんは4歳で母親を亡くしている。
成人してから、母親が父親に宛てた手紙を母親の友人が持っているのを知り、訪ねていった。
大切なものとは、その母親から父親への何通もの手紙。
真っ暗で何も見えない中で、クラウディアのお祖母さんはその手紙を探し当て、有毒ガスにも飲み込まれず還ってきた、と。
そして、それを本にしたのだという。

十人に一人が作家だという国、アイスランド
人間と自然との関係がそんな物語を生んでいくのだ、と思った。

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夕飯は初の外食、アイルランド初ビール付き。

レトロなアメリカン・バーで、美味しく、リーズナブルな値段だった。

そして帰り道、教会の写真を撮っていると後ろから声をかけられ、振り向くと「あれ、オーロラだと思うんですけど」。

見上げると、レイキャビクの空に、くっきりと大きなオーロラのカーテンが。

明るい街中では見えないはずなのに。

わざわざ教えてくれた人に何度も御礼を言って、海まで走ったのだった。

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